STEP 13:実験計画法の基礎

🔬 STEP 13: 実験計画法の基礎

無作為化、対照群、交絡因子、バイアスを理解しよう

📖 このステップで学ぶこと

無作為化対照群と実験群交絡因子バイアス盲検法を学びます。

📝 練習問題: 10問
🎯 到達目標: 無作為化の重要性を説明できる、対照群と実験群の違いがわかる、交絡因子とバイアスを理解する、簡単な実験計画が設計できる

1️⃣ 無作為化(ランダム化)

無作為化(Randomization)
被験者を実験群と対照群にランダムに割り付ける

目的:
• 既知の交絡因子を均等に分散
• 未知の交絡因子も均等に分散
• 選択バイアスを防ぐ
• 因果関係の推論を可能にする
例題1: 新薬の効果を調べる実験で、無作為化の有無による違いを説明しなさい。
無作為化がないと因果関係を主張できない



【悪い例:無作為化なし】
医師が患者を振り分ける場合:

「重症の患者には新薬を試したい」
「軽症の患者は対照群でいいだろう」

結果:
・実験群(新薬): 平均的に重症者が多い
・対照群: 平均的に軽症者が多い

もし新薬群の方が回復率が低かったら?
→ 新薬が悪いのか?
→ もともと重症だったからか?
→ 区別できない!



【良い例:無作為化あり】
コインを投げて振り分ける場合:

表が出た患者 → 実験群(新薬)
裏が出た患者 → 対照群

結果:
・実験群: 重症・軽症が混在(偶然による分布)
・対照群: 重症・軽症が混在(偶然による分布)
・両群の重症度がほぼ均等になる

もし新薬群の方が回復率が高かったら?
→ 重症度の差ではない
→ 新薬の効果と推論できる!



【無作為化の威力】
無作為化すると:
・年齢、性別、重症度などの既知の要因が均等に
・研究者が知らない要因(遺伝、生活習慣など)も均等に
・「偶然」以外に両群の差を説明できなくなる
→ 結果の差は処置の効果と結論できる



【まとめ】
無作為化なし: 結果の差が「処置の効果」か
            「もともとの違い」か区別できない

無作為化あり: 結果の差は「処置の効果」と
            因果関係を主張できる
💡 無作為化の方法
単純ランダム化: くじ引き、乱数表、コンピュータ乱数
ブロックランダム化: 一定数ごとに両群の人数をバランス
層別ランダム化: 性別・年齢などの層内でランダム化
⚡ なぜ無作為化が必要か?

無作為化しないと:
• 医師の判断で割り付け → 重症者が片方に偏る
• 患者の希望で割り付け → 意識の高い人が片方に偏る
• 到着順で割り付け → 時系列の要因が混入

→ すべて選択バイアスを生み、因果推論が困難に

2️⃣ 対照群(コントロール群)と実験群

対照群(Control Group)
処置を受けない、または標準的な処置を受ける群

実験群(Treatment Group)
新しい処置を受ける群

対照群の役割:
• 比較の基準を提供
• 自然治癒や時間経過の影響を測定
• プラセボ効果を測定
例題2: 新しい勉強法の効果を調べる実験を設計しなさい。
対照群と実験群を設定し、無作為に割り付ける



【ステップ1: 実験の目的を明確にする】
目的: 新しい勉強法が従来の勉強法より効果的か?

測定する結果(アウトカム):
・テストの点数
・学習時間
・記憶の定着度



【ステップ2: 対象者を集める】
対象者: 同じ学校の同学年の生徒100人

注意点:
・学力レベルが極端に偏らないように
・参加への同意を得る



【ステップ3: 無作為に割り付ける】
方法: コンピュータで乱数を生成

実験群: 50人 → 新しい勉強法
対照群: 50人 → 従来の勉強法

※層別ランダム化も可能:
・男女別に25人ずつ無作為割り付け
・これで性別の影響を均等にできる



【ステップ4: 実験を実施】
期間: 1ヶ月間

実験群: 新しい勉強法で毎日30分学習
対照群: 従来の勉強法で毎日30分学習

※学習時間を揃えることで
  時間の影響を除去



【ステップ5: 結果を測定・比較】
結果(例):
実験群の平均点: 75点
対照群の平均点: 70点

差: 5点

統計的検定:
・t検定で有意差を確認
・p < 0.05 なら「新しい勉強法は効果的」

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【対照群がない場合の問題】
もし対照群がなかったら:

「新しい勉強法で平均75点取れた!」

でも...
・何もしなくても75点だったかもしれない
・1ヶ月の学校の授業で上がったかもしれない
・テストが簡単だったかもしれない

→ 比較対象がないと効果がわからない

対照群の種類

1. プラセボ対照(Placebo Control)
偽薬(見た目は本物と同じだが有効成分なし)を投与
→ プラセボ効果を除去できる

2. 無処置対照(No Treatment Control)
何も処置しない群
→ 自然経過との比較ができる

3. 標準治療対照(Active Control)
既存の標準的な治療を行う群
→ 倫理的に無処置が許されない場合に使用
⚠️ 対照群がない実験の問題
• 自然治癒との区別ができない
• プラセボ効果との区別ができない
• 時間経過による変化との区別ができない
因果関係を主張できない

3️⃣ 交絡因子(第3の変数)

交絡因子(Confounding Factor)
説明変数と目的変数の両方に影響を与える第3の変数

交絡因子があると、XとYの関係が歪んで見える
→ 見かけの関係(疑似相関)が生じる
例題3: 「アイスクリームの売上が多い日は溺死者も多い」という関係について、交絡因子を特定しなさい。
交絡因子は「気温」

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【観察された関係】
データを見ると:
・アイスクリームの売上が多い日 → 溺死者も多い
・アイスクリームの売上が少ない日 → 溺死者も少ない

相関係数を計算すると正の相関がある

素朴な解釈:
「アイスクリームを食べると溺れやすくなる?」
→ これは誤り!

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【交絡因子を特定する】
第3の変数「気温」を考える:

気温が高い日:
・暑いからアイスが売れる ← 気温 → アイス売上
・暑いから海やプールに行く人が増える
・水辺に人が増えるから溺死者が増える ← 気温 → 溺死

気温が低い日:
・アイスは売れない
・海やプールに行く人が減る
・溺死者も減る

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【交絡因子の構造】
       気温(交絡因子)
      ↙        ↘
アイス売上    溺死者数

・気温 → アイス売上(直接影響)
・気温 → 溺死者数(直接影響)
・アイス売上 → 溺死者数(因果関係なし!)

アイスと溺死は「見かけの相関」(疑似相関)

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【交絡因子を取り除くと】
気温を一定にして比較すると:

気温30℃の日だけで分析:
・アイス売上が多い日も少ない日も
・溺死者数は変わらない

→ アイスと溺死に直接の関係はない

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【交絡因子の見分け方】
交絡因子の条件:
1. 説明変数(X)に影響を与える
2. 目的変数(Y)に影響を与える
3. XとYの因果経路上にない(中間変数ではない)

この例では:
・気温はアイス売上に影響 ✓
・気温は溺死者数に影響 ✓
・気温はアイス→溺死の経路上にない ✓
→ 気温は交絡因子

交絡因子への対策

💡 交絡因子の制御方法

1. 無作為化(Randomization)
既知・未知の交絡因子を均等に分散
→ 実験研究で最も強力な方法

2. マッチング(Matching)
年齢・性別などを対照群と実験群で揃える
→ 観察研究でよく使われる

3. 層別化(Stratification)
交絡因子ごとに層を作って別々に分析
→ 各層内では交絡因子が一定

4. 統計的調整
重回帰分析などで交絡因子の影響を除去
→ 既知の交絡因子のみ対応可能

4️⃣ バイアス(偏り)

バイアス(Bias)
系統的な誤差や偏り

主なバイアスの種類:
• 選択バイアス
• 測定バイアス
• 情報バイアス
• 交絡バイアス
例題4: 以下の研究で生じうるバイアスを特定しなさい。

(a) 健康食品の効果を調べるアンケート調査
(b) 医師が新薬の効果を評価する臨床試験
(c) 過去の食習慣を患者に尋ねる疫学調査
それぞれ異なるバイアスが生じる

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【(a) 健康食品のアンケート調査】
生じるバイアス: 選択バイアス

問題点:
・健康に関心が高い人だけが回答しやすい
・効果を感じた人は積極的に回答
・効果を感じなかった人は回答しない

結果:
・回答者は「効果あり」に偏る
・効果が過大評価される

対策:
・無作為抽出で対象者を選ぶ
・回答率を上げる工夫
・非回答者の特性を分析

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【(b) 医師が新薬を評価】
生じるバイアス: 測定バイアス(観察者バイアス)

問題点:
・医師が「この患者は新薬を使っている」と知っている
・「新薬は効くはずだ」という期待がある
・無意識に症状の改善を高く評価してしまう

結果:
・新薬の効果が過大評価される

対策:
・二重盲検法(医師も患者もどちらか知らない)
・客観的な測定指標を使う(血圧値など)

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【(c) 過去の食習慣を尋ねる】
生じるバイアス: 情報バイアス(想起バイアス)

問題点:
・病気になった患者は「原因を知りたい」
・過去の食習慣を詳しく思い出そうとする
・健康な人は詳しく思い出す動機がない

結果:
・患者群で曝露(特定の食品摂取など)が
  過大に報告される

対策:
・質問方法を標準化
・客観的な記録(医療記録など)を使用
・前向き研究(将来を追跡)に変更

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【バイアスの種類まとめ】
バイアス発生場面主な対策
選択バイアス対象者の選択無作為化、無作為抽出
測定バイアス結果の測定盲検法、客観的指標
情報バイアス情報収集標準化、客観的記録
交絡バイアス分析層別化、統計的調整

5️⃣ 盲検法(ブラインド法)

盲検法(Blinding)
実験群か対照群かを知らせない方法

単盲検(Single-Blind)
被験者が知らない

二重盲検(Double-Blind)
被験者も実施者(医師など)も知らない

三重盲検(Triple-Blind)
被験者・実施者・分析者も知らない
例題5: 二重盲検法の臨床試験の流れを説明しなさい。
患者も医師も割り付けを知らない状態で試験を行う

---

【ステップ1: 薬の準備】
新薬とプラセボ(偽薬)を用意:
・見た目が完全に同じ(色、形、大きさ)
・匂いや味も同じにする
・番号だけで区別(A001, A002, ...)

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【ステップ2: 無作為割り付け】
コンピュータで無作為に割り付け:
・患者ID 001 → 薬番号 A001(新薬)
・患者ID 002 → 薬番号 A002(プラセボ)
・患者ID 003 → 薬番号 A003(新薬)
...

対応表は第三者(データ管理者)だけが保管

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【ステップ3: 試験の実施】
患者の視点:
「番号がついた薬をもらった」
「本物か偽物かはわからない」

医師の視点:
「番号がついた薬を処方した」
「本物か偽物かはわからない」

→ どちらも「盲検」されている状態

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【ステップ4: 効果の評価】
医師が患者の症状を評価:
・症状スコアを記録
・副作用を記録
・客観的検査値を記録

「新薬だから効くはず」という期待がないので
客観的に評価できる

---

【ステップ5: 開鍵(コード破り)】
試験終了後:
1. すべてのデータを収集
2. 対応表を開示
3. 新薬群とプラセボ群のデータを比較
4. 統計解析を実施

開鍵のタイミング:
・すべての患者の追跡が完了してから
・中間解析が必要な場合は独立委員会が判断

---

【二重盲検の効果】
除去できるバイアス:

1. プラセボ効果の除去
   患者が「本物だ」と思い込む効果を
   両群で均等にする

2. 期待バイアスの除去
   医師が「効くはずだ」と思って
   評価が甘くなることを防ぐ

3. 意識的・無意識的な偏りの除去
   知らなければ偏りようがない
⚡ 盲検法の重要性

プラセボ効果:
「薬だと思うだけ」で症状が改善することがある
→ 真の薬効を測定するには盲検が必須

期待バイアス:
医師が「効くはずだ」と思うと、評価が甘くなる
→ 客観的評価のために盲検が必須
⚠️ 盲検法が使えない場合
• 手術 vs 薬物療法の比較(見た目で区別できる)
• リハビリや運動療法(偽の運動は困難)
• 心理療法(療法自体が見える)

→ このような場合は、評価者だけでも盲検にする(単盲検)

📊 良い実験計画のチェックリスト

因果関係を主張するための条件

□ 無作為化されているか?
→ 交絡因子を均等に分散

□ 対照群があるか?
→ 比較の基準を提供

□ 盲検法が適用されているか?
→ プラセボ効果・期待バイアスを除去

□ サンプルサイズは十分か?
→ 検出力を確保

□ 結果は客観的に測定されているか?
→ 測定バイアスを防ぐ

📝 練習問題(10問)

このステップの理解度を確認しましょう。8問以上正解できれば次のステップへ進めます。

問題 1

無作為化の目的

無作為化の主な目的は何か?

解答: 交絡因子を均等に分散させる

【解き方】
無作為化により:
・既知の交絡因子(年齢、性別など)が均等に
・未知の交絡因子も均等に分散
→ 因果関係の推論が可能になる
問題 2

対照群の役割

対照群が必要な理由は?

解答: 比較の基準を提供するため

【解き方】
対照群がないと:
・自然治癒との区別ができない
・時間経過の影響がわからない
・処置の効果を測定できない
問題 3

交絡因子とは

交絡因子の定義は?

解答: 説明変数と目的変数の両方に影響を与える第3の変数

【解き方】
交絡因子の条件:
1. Xに影響を与える
2. Yに影響を与える
3. X→Yの経路上にない
→ XとYの関係を歪める
問題 4

二重盲検

二重盲検法で「知らない」のは誰?

解答: 被験者と実施者(医師など)

【解き方】
単盲検: 被験者のみ知らない
二重盲検: 被験者+実施者が知らない
三重盲検: 被験者+実施者+分析者が知らない
問題 5

プラセボ効果

プラセボ効果とは何か?

解答: 偽薬でも「薬だと思うだけ」で症状が改善する現象

【解き方】
心理的な効果
・期待や暗示による改善
・真の薬効と区別するために盲検が必要
問題 6

選択バイアス

選択バイアスを防ぐ方法は?

解答: 無作為化(ランダム割り付け)

【解き方】
選択バイアス = 対象者選択の偏り
・医師の判断、患者の希望で割り付けると偏る
・無作為化で意図的な選択を排除
問題 7

交絡因子の例

コーヒーと心臓病の関係で、喫煙が交絡因子になる理由は?

解答: 喫煙者はコーヒーをよく飲み、かつ心臓病になりやすいから

【解き方】
喫煙(Z)が両方に影響:
・喫煙 → コーヒー摂取(休憩時に一緒に)
・喫煙 → 心臓病リスク上昇
→ コーヒーと心臓病の見かけの相関が生じる
問題 8

実験計画

新しいダイエット法の効果を調べる。対照群には何をさせるべきか?

解答: 従来のダイエット法(または何もしない)

【解き方】
比較のための基準が必要
・無処置対照: 通常の生活を継続
・標準治療対照: 従来のダイエット法
→ 新しい方法の「追加効果」がわかる
問題 9

層別ランダム化

層別ランダム化を使う理由は?

解答: 重要な交絡因子(年齢・性別など)を両群で確実に均等にする

【解き方】
単純ランダム化では偶然に偏りが生じる可能性
層別ランダム化:
・まず性別などで層を作る
・層内でランダム化
→ 重要な要因が確実に均等になる
問題 10

因果推論

観察研究で因果関係を主張しにくい理由は?

解答: 交絡因子や選択バイアスを完全には除去できないため

【解き方】
観察研究の限界:
・無作為化できない(既存のデータを使う)
・未知の交絡因子を制御できない
・選択バイアスが生じやすい
→ 無作為化比較試験(RCT)が因果推論の金字塔

⚠️ よくあるつまずきポイントと対策

「相関がある」と「因果関係がある」を混同する

対策: 相関は関連の強さ、因果は原因と結果の関係です。

  • 相関関係: XとYが一緒に変動する
  • 因果関係: XがYを引き起こす
  • 因果の証明には無作為化実験が必要

交絡因子と中間変数を混同する

対策: 因果の経路上にあるかどうかで区別します。

  • 交絡因子: X←Z→Y(Zが両方に影響、経路外)
  • 中間変数: X→Z→Y(XがZを通じてYに影響、経路上)
  • 中間変数を制御すると真の効果が消える

「対照群がない」ことの問題を軽視する

対策: 比較なしに効果は測定できません。

  • 「新しい方法で良くなった」→ 何もしなくても良くなったかも
  • 「90%が満足」→ 従来法でも90%かもしれない
  • 必ず「比較して何%良い」と考える

バイアスの種類を区別できない

対策: どの段階で偏りが生じるかで分類します。

  • 選択バイアス: 対象者の選択段階
  • 測定バイアス: 結果の測定段階
  • 情報バイアス: 情報収集段階
  • 交絡バイアス: 分析・解釈段階

📚 このステップのまとめ

🎯 学習したこと

  • 無作為化: 交絡因子を均等に分散、因果推論の基礎
  • 対照群: 比較の基準を提供、効果測定に必須
  • 交絡因子: X・Yの両方に影響する第3の変数
  • バイアス: 選択・測定・情報・交絡バイアス
  • 盲検法: プラセボ効果・期待バイアスを除去
  • 因果推論: 無作為化比較試験(RCT)が理想
💡 次のステップへ進む前に
練習問題で8問以上(80%以上)正解できたら、STEP 14に進みましょう!

実験計画法は因果推論の基礎です。
無作為化の重要性をしっかり理解しましょう!

📝

学習メモ

統計検定2級対策 - Step 13

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