🎯 STEP 39: 感度分析とシナリオ分析
変数の変化が結果にどう影響するかを分析しよう
📋 このステップで学ぶこと
- 感度分析の概念と目的
- 変数の影響度評価方法
- トルネードチャートの作成と読み方
- シナリオ分析(楽観・標準・悲観)
- PythonとExcelでの実装方法
🔍 1. 感度分析とは
なぜ感度分析が必要なのか
ビジネスの計画を立てるとき、「売上は1,000万円になる」「利益は200万円になる」と予測しますよね。でも、その予測には不確実性があります。
予測が外れる原因:
・価格競争で値下げが必要になるかも
・想定より売れないかも
・原材料費が上がるかも
・固定費(人件費など)が増えるかも
疑問:
「もし価格が10%下がったら、利益はどうなる?」
「もし販売数量が20%減ったら、赤字になる?」
→ この「もし〜だったら」を分析するのが感度分析!
定義:
入力値(変数)を変化させたとき、結果(利益など)がどれくらい変わるかを分析すること
感度分析で分かること:
① 重要な変数の特定
「価格が1%変わると利益が5%変わる」
「固定費が1%変わっても利益は0.5%しか変わらない」
→ 価格の管理が最重要!と分かる
② リスクの把握
「価格が20%下がると赤字になる」
→ 価格競争への対策が必要と分かる
③ 意思決定の頑健性確認
「多少条件が変わっても、この計画は黒字」
→ 自信を持って計画を実行できる
感度分析の具体例
基準ケース(ベースライン):
・価格:1,000円
・原価:600円
・販売数量:10,000個
・固定費:200万円
利益の計算式:
利益 = (価格 − 原価)× 販売数量 − 固定費
= (1,000 − 600)× 10,000 − 2,000,000
= 400 × 10,000 − 2,000,000
= 4,000,000 − 2,000,000
= 200万円
感度分析の質問:
・価格が10%下がったら利益は?
・販売数量が20%増えたら利益は?
・原価が5%上がったら利益は?
・どの変数の影響が最も大きい?
感度分析の種類
| 分析の種類 | 内容 | 使いどころ |
|---|---|---|
| 一変数感度分析 | 1つの変数だけを変化させる 他の変数は固定 |
各変数の影響を個別に把握 |
| 二変数感度分析 | 2つの変数を同時に変化させる マトリックスで表示 |
変数間の相互作用を確認 |
| トルネード分析 | すべての変数の影響度を比較 影響の大きい順に並べる |
重点管理すべき変数を特定 |
📊 2. 感度分析の実装
Pythonで感度分析をしてみよう
まずは、1つの変数だけを変化させる一変数感度分析から始めましょう。
Step 1:利益を計算する関数を作成
Step 2:価格の感度分析
重要な発見:
・価格が10%上がると、利益は50%増加(200万→300万)
・価格が10%下がると、利益は50%減少(200万→100万)
・価格が20%下がると、利益はゼロ(損益分岐点)
・価格が30%下がると、100万円の赤字
結論:価格は利益に大きな影響を与える!
→ 価格競争には要注意、値引きは慎重に
Step 3:販売数量と原価の感度分析
変数が10%変化したときの利益への影響:
1位:価格 → 利益50%変化
2位:原価 → 利益30%変化
3位:販売数量 → 利益20%変化
実務への示唆:
・価格の管理が最重要(値引きは慎重に!)
・原価削減も効果が大きい(仕入れ交渉、効率化)
・販売数量増加は影響が比較的小さい
※ ただし、これはこのケースの話。
商品や状況によって結果は変わります。
トルネード分析
トルネード分析は、すべての変数の影響度を1つのグラフで比較する方法です。竜巻(トルネード)の形に似ているのでこの名前がついています。
Step 4:トルネードチャートの作成
※ 以下のコードは横スクロールで全体を確認できます。
振れ幅の大きさ = 影響度の大きさ
1位:価格(振れ幅400万円)
2位:原価(振れ幅240万円)
3位:販売数量(振れ幅160万円)
4位:固定費(振れ幅80万円)
価格の振れ幅は固定費の5倍!
→ 価格管理に最も注力すべき
Excelでの感度分析
🎭 3. シナリオ分析
シナリオ分析とは
感度分析は「1つの変数だけ」を変えましたが、現実では複数の変数が同時に変化します。例えば、景気が悪くなると「価格が下がり」「販売数量も減り」「原価は上がる」といった具合です。
感度分析との違い:
・感度分析:1変数ずつ変化
・シナリオ分析:複数変数を同時に変化
なぜシナリオ分析が必要か:
現実世界では、変数は独立して動かない。
・景気後退 → 価格↓、数量↓、原価↑ が同時に起きる
・好景気 → 価格↑、数量↑、原価↓ が同時に起きる
→ より現実的なシミュレーションができる!
3つの標準シナリオ
① 楽観シナリオ(Best Case)
「すべてがうまくいった場合」
・価格:+10%(値上げに成功)
・販売数量:+20%(予想以上に売れた)
・原価:-10%(仕入れコスト削減に成功)
・固定費:-5%(効率化に成功)
② 標準シナリオ(Base Case)
「計画通りの場合」
・すべての変数が基準値のまま
・最も可能性が高いと考えるケース
③ 悲観シナリオ(Worst Case)
「すべてが悪い方向に行った場合」
・価格:-10%(値下げを余儀なくされた)
・販売数量:-20%(予想より売れなかった)
・原価:+10%(原材料費が高騰)
・固定費:+5%(コストが増加)
Pythonでシナリオ分析
Step 1:シナリオの定義
Step 2:各シナリオの利益を計算
Step 3:結果の比較と評価
結果のまとめ:
・楽観シナリオ:利益482万円(標準の2.4倍)
・標準シナリオ:利益200万円(基準)
・悲観シナリオ:18万円の赤字
⚠️ 悲観シナリオで赤字になる!
必要な対策:
・固定費を18万円以上削減できれば、悲観でも黒字
・価格維持のための差別化戦略
・販売数量確保のためのマーケティング強化
・原価削減のための仕入れ交渉
→ 事前に対策を準備しておくことが重要!
Excelでのシナリオ分析
💼 4. 実務での活用方法
感度分析・シナリオ分析の使い分け
| 分析手法 | 使うタイミング | 目的 |
|---|---|---|
| 感度分析 | 初期検討段階 | 重要な変数を特定する 管理すべき指標を決める |
| トルネード分析 | 重点管理の決定時 | すべての変数の影響度を比較 優先順位を可視化 |
| シナリオ分析 | 最終意思決定時 | 最悪ケースでの損益確認 リスク対策の検討 |
経営層へのプレゼンでの使い方
① まず感度分析の結果を示す
「価格が最も利益に影響します。10%の変化で利益は50%変わります。」
→ 何を重点管理すべきか明確に
② トルネードチャートで視覚化
「このグラフの通り、価格の影響が最大です。次いで原価、販売数量の順です。」
→ 一目で重要度が分かる
③ シナリオ分析で最悪ケースを示す
「すべてが悪い方向に行っても、○○の対策があれば黒字を維持できます。」
→ リスクを理解した上での提案
④ 対策とアクションプランを提示
「価格維持のために差別化を強化します。月次でモニタリングします。」
→ 具体的な行動計画
📝 STEP 39 のまとめ
1. 感度分析
- 「もし〜が変わったら、結果はどう変わる?」を分析
- 1つの変数を変化させて影響度を測定
- 重要な変数を特定できる
2. トルネード分析
- すべての変数の影響度を比較
- 影響の大きい順に並べて可視化
- 重点管理すべき変数が一目で分かる
3. シナリオ分析
- 複数の変数を同時に変化させる
- 楽観・標準・悲観の3シナリオ
- 最悪ケースでも大丈夫か確認
4. 実務での活用
- リスク評価と対策立案
- 経営層への説得力あるプレゼン
- 自信を持った意思決定
不確実性を理解した上で意思決定しよう!
ビジネスの予測には必ず不確実性があります。感度分析とシナリオ分析を使えば…
・どの変数が最も重要か分かる
・最悪の場合でも耐えられるか確認できる
・リスク対策を事前に準備できる
・自信を持って意思決定できる
次のSTEP 40では、「What-If分析」を学びます。より柔軟に「もし〜だったら」を分析する方法を習得しましょう!
STEP 40では、「What-If分析」を学びます。Excelのゴールシークやソルバーを使って、目標達成に必要な条件を逆算する方法を習得しましょう!
📝 練習問題
感度分析とシナリオ分析の違いを説明してください。
| 感度分析 | シナリオ分析 | |
|---|---|---|
| 変化させる変数 | 1つずつ | 複数を同時に |
| 目的 | 各変数の影響度を把握 | 現実的なケースを想定 |
| 使いどころ | 重要変数の特定 | リスク評価・最終判断 |
| 結果 | 「価格が10%変わると利益は50%変わる」 | 「最悪でも18万円の赤字で済む」 |
使い分けのコツ:
① まず感度分析で重要な変数を特定
② 次にシナリオ分析で最悪ケースを確認
③ 両方の結果を踏まえて意思決定
以下の基準ケースで、価格が10%上昇した場合の利益を計算してください。
・価格:2,000円
・原価:1,200円
・販売数量:5,000個
・固定費:300万円
基準ケースの利益:
変動費 = 1,200 × 5,000 = 6,000,000円
貢献利益 = 10,000,000 – 6,000,000 = 4,000,000円
利益 = 4,000,000 – 3,000,000 = 1,000,000円
価格10%上昇後(2,200円):
変動費 = 1,200 × 5,000 = 6,000,000円
貢献利益 = 11,000,000 – 6,000,000 = 5,000,000円
利益 = 5,000,000 – 3,000,000 = 2,000,000円
利益の変化:
100万円 → 200万円(+100%、2倍)
ポイント:価格が10%上がっただけで、利益は2倍に!
→ 価格の影響度が非常に大きいことが分かる
問題2の基準ケースで、以下の3つのシナリオの利益を計算してください。
楽観シナリオ:価格+5%、数量+15%、原価-5%
悲観シナリオ:価格-5%、数量-15%、原価+5%
悲観シナリオでも黒字かどうか評価してください。
楽観シナリオ:
販売数量 = 5,000 × 1.15 = 5,750個
原価 = 1,200 × 0.95 = 1,140円
売上 = 2,100 × 5,750 = 12,075,000円
変動費 = 1,140 × 5,750 = 6,555,000円
貢献利益 = 5,520,000円
利益 = 5,520,000 – 3,000,000 = 2,520,000円
悲観シナリオ:
販売数量 = 5,000 × 0.85 = 4,250個
原価 = 1,200 × 1.05 = 1,260円
売上 = 1,900 × 4,250 = 8,075,000円
変動費 = 1,260 × 4,250 = 5,355,000円
貢献利益 = 2,720,000円
利益 = 2,720,000 – 3,000,000 = -280,000円(赤字)
評価:
リスク対策案:
・固定費を28万円以上削減 → 悲観でも損益分岐
・価格維持のための差別化戦略
・販売数量確保のマーケティング強化
・原価削減の仕入れ交渉
トルネード分析の結果が以下の通りでした。最も管理すべき変数はどれですか?理由も説明してください。
・価格(±20%):利益の振れ幅 400万円
・販売数量(±20%):利益の振れ幅 160万円
・原価(±20%):利益の振れ幅 240万円
・固定費(±20%):利益の振れ幅 80万円
管理優先順位:
2位:原価(振れ幅240万円)
3位:販売数量(振れ幅160万円)
4位:固定費(振れ幅80万円)
最も管理すべき変数:価格
・利益への影響が最も大きい(400万円)
・2位の原価(240万円)の約1.7倍
・4位の固定費(80万円)の5倍
具体的なアクション:
・競合価格の定期モニタリング
・値引き権限の明確化(安易な値引き防止)
・価格維持のための差別化戦略
・価格弾力性の分析(値上げ余地の検討)
あなたは新規事業の企画担当です。以下の計画について、感度分析とシナリオ分析を行い、経営会議で提案する内容をまとめてください。
基準ケース:
・価格:5,000円
・原価:3,000円
・販売数量:2,000個/年
・固定費:200万円/年
シナリオ設定:
・楽観:価格+10%、数量+30%、原価-10%
・悲観:価格-10%、数量-30%、原価+10%
① 基準ケースの利益:
= 4,000,000 – 2,000,000 = 200万円
② 感度分析(各変数10%変化時):
数量+10% → 利益240万円(+20%)
原価+10% → 利益140万円(-30%)
→ 価格の影響が最大
③ シナリオ分析:
価格5,500円、数量2,600個、原価2,700円
利益 = (5,500-2,700)×2,600 – 2,000,000
= 7,280,000 – 2,000,000 = 528万円
悲観シナリオ:
価格4,500円、数量1,400個、原価3,300円
利益 = (4,500-3,300)×1,400 – 2,000,000
= 1,680,000 – 2,000,000 = -32万円(赤字)
④ 経営会議への提案内容:
収益見通し:
・標準ケース:利益200万円
・楽観ケース:利益528万円
・悲観ケース:赤字32万円
重点管理項目:
・価格(影響度最大)の維持
・差別化による価格競争回避
リスク対策:
・固定費を32万円削減で悲観でも黒字化
・販売数量1,700個を最低ライン目標に
・月次モニタリングで早期に対策
推奨アクション:
・固定費10%削減を前提に事業開始
・初年度は慎重に、2年目以降で拡大
❓ よくある質問
変化率の設定方法:
① 過去データから
・過去3〜5年の変動幅を確認
・標準偏差を計算
・±1σ(68%範囲)または±2σ(95%範囲)を使用
② 業界標準から
・成長期:±20〜30%
・安定期:±10%
・衰退期:-20〜30%
③ 保守的アプローチ
・楽観:控えめに(+10%)
・悲観:厳しめに(-20%)
→ 失敗のリスクを重視
推奨:初回は±10〜20%から始め、実績を見ながら調整
対応の選択肢:
① 計画を修正
・悲観でも黒字になるよう固定費削減
・より保守的な計画に変更
② リスク対策を準備
・早期警戒指標の設定
・コンティンジェンシープラン
・撤退基準の明確化
③ リスクを受容
・悲観シナリオの発生確率が低い
・赤字額が許容範囲内
・戦略的に重要な事業
④ 計画を中止
・リスクが大きすぎる
・対策が不十分
・他により良い選択肢がある
判断基準:「悲観シナリオの赤字額」と「その発生確率」を総合判断
効果的なプレゼン構成:
① 結論から先に
「この計画は、価格の管理が最重要です。価格が10%下がると利益は半減します。」
② トルネードチャートで視覚化
・グラフで影響度の大きさを一目で見せる
・「価格の棒が一番長いのが分かります」
③ 具体的な数字で説明
・「価格1%の変化 = 利益5万円の変化」
・「最悪でも赤字は30万円で済みます」
④ アクションプランを提示
・「価格維持のために○○をします」
・「月次でモニタリングします」
⑤ 質問への備え
・「○○が起きたらどうなる?」への回答を準備
・シナリオ分析の結果を用意
Excelが向いている場合:
・シンプルな分析(変数が少ない)
・チームで共有したい
・経営層への説明資料作成
・What-If分析機能を使いたい
Pythonが向いている場合:
・複雑な分析(変数が多い)
・繰り返し分析する
・高度な可視化が必要
・モンテカルロシミュレーション
おすすめの使い方:
① Pythonで詳細分析
② 結果をExcelにまとめて共有
③ プレゼンはExcelのグラフを使用
変数を絞り込む手順:
① 感度分析を実施
・すべての変数について影響度を計算
・トルネードチャートで可視化
② 上位3〜5個に絞る
・影響度の大きい変数を選択
・80/20の法則(上位20%の変数が80%の影響)
③ シナリオを作成
・絞り込んだ変数だけでシナリオ作成
・その他の変数は固定
④ 必要に応じて追加
・特に不確実性が高い変数
・コントロールが難しい変数
実務のコツ:
完璧を目指さず、80%の精度で十分。
重要な変数だけに集中することで、分析が現実的になります。
学習メモ
ビジネスデータ分析・意思決定 - Step 39