💰 STEP 26: 顧客生涯価値(LTV)の計算
顧客が生涯でもたらす価値を計算しよう
📋 このステップで学ぶこと
- LTV(顧客生涯価値)とは何か
- LTVの計算式(シンプル〜詳細)
- チャーン率を考慮したLTV
- CAC(顧客獲得コスト)との関係
- LTVの実務活用
学習時間の目安:3時間
🔍 1. LTV(顧客生涯価値)とは
基本概念
1人の顧客が、取引開始から終了までの期間に企業にもたらす利益の総額
なぜLTVが重要なのか:
1. 顧客獲得コストの判断
・LTV > CAC(顧客獲得コスト)なら健全
・例:LTV 10万円、CAC 3万円 → OK!
・例:LTV 5万円、CAC 8万円 → 赤字!
2. マーケティング投資の最適化
・いくらまで広告費をかけられるか
・LTVが高いセグメントに注力
3. ビジネスの持続可能性
・短期的な売上だけでなく、長期的な価値
・LTV向上 = ビジネス成長
4. 顧客セグメントの優先順位
・LTVが高いセグメント → 手厚くケア
・LTVが低いセグメント → コスト削減
LTVの基本計算式
LTV = 平均購買単価 × 購買頻度 × 継続期間
例1:サブスクリプションサービス
・月額料金:1,000円
・平均継続期間:24ヶ月
・LTV = 1,000円 × 24ヶ月 = 24,000円
例2:ECサイト
・平均購買単価:5,000円
・年間購買頻度:4回
・平均継続年数:3年
・LTV = 5,000円 × 4回/年 × 3年 = 60,000円
例3:フィットネスジム
・月会費:8,000円
・平均継続期間:18ヶ月
・LTV = 8,000円 × 18ヶ月 = 144,000円
LTVのバリエーション
| 計算方法 | 計算式 | 用途 |
|---|---|---|
| シンプルLTV | 単価 × 頻度 × 継続期間 | 簡易的な試算 |
| 粗利ベースLTV | シンプルLTV × 粗利率 | 利益ベースの判断 |
| チャーン率ベースLTV | 月額収益 × (1/チャーン率) | サブスク向け |
| 割引率考慮LTV | 将来収益を現在価値に割引 | 長期投資判断 |
📊 2. チャーン率を考慮したLTV
チャーン率とは
一定期間に解約・離脱する顧客の割合
月次チャーン率の計算:
月次チャーン率 = (月初の顧客数 – 月末の顧客数) / 月初の顧客数 × 100%
例:
・月初:1,000人
・月末:950人(50人解約)
・チャーン率 = 50 / 1,000 × 100% = 5%
平均継続期間との関係:
平均継続期間(月)= 1 / 月次チャーン率
・月次チャーン率 5% → 平均継続期間 = 1/0.05 = 20ヶ月
・月次チャーン率 10% → 平均継続期間 = 1/0.10 = 10ヶ月
・月次チャーン率 2% → 平均継続期間 = 1/0.02 = 50ヶ月
Pythonでの実装
LTV計算クラスの実装
💡 3. LTVとCAC(顧客獲得コスト)の関係
CAC(Customer Acquisition Cost)とは
CAC計算式:
CAC = (マーケティング費用 + 営業費用) / 新規顧客獲得数
例:
・月間マーケティング費用:300万円
・月間営業費用:200万円
・月間新規顧客:100人
・CAC = (300万 + 200万) / 100人 = 5万円/人
LTV/CAC比率
LTV/CAC比率の目安:
・3倍以上:非常に健全!(理想的)
・2〜3倍:健全(まあまあ良い)
・1〜2倍:要改善(ギリギリ)
・1倍未満:危険!(赤字)
例1:健全なケース
・LTV:60,000円
・CAC:15,000円
・LTV/CAC = 4.0倍 → 非常に良い!
例2:危険なケース
・LTV:20,000円
・CAC:25,000円
・LTV/CAC = 0.8倍 → 赤字!
回収期間(Payback Period)
回収期間 = CAC / 月間平均収益
例:
・CAC:30,000円
・月額収益:5,000円
・回収期間 = 30,000 / 5,000 = 6ヶ月
目安:
・12ヶ月以内:優秀
・12〜18ヶ月:許容範囲
・18ヶ月超:改善必要
LTV/CAC分析の実装
🚀 4. LTV改善戦略
LTV向上の3つの戦略
施策:
・アップセル(上位プランへ誘導)
・クロスセル(関連商品提案)
・バンドル販売(セット割)
・段階的値上げ
効果:即効性あり
施策:
・リマインドメール/通知
・定期購入の提案
・ポイントプログラム
・季節キャンペーン
効果:中期的に効果
施策:
・オンボーディング強化
・カスタマーサポート充実
・継続特典(継続割引等)
・コミュニティ形成
効果:最も効果大
改善効果シミュレーション
📑 5. Excelでの実装
LTV計算式
📝 STEP 26 のまとめ
1. LTVの基本
- 顧客が生涯でもたらす価値の総額
- LTV = 単価 × 頻度 × 継続期間
2. チャーン率との関係
- 平均継続月数 = 1 / チャーン率
- チャーン率改善がLTV向上の鍵
3. LTV/CAC比率
- 3倍以上が健全な目安
- 1倍未満は危険信号
4. LTV改善戦略
- 単価UP、頻度UP、継続期間延長
- 継続期間延長が最も効果的
LTVは、ビジネスの持続可能性を測る最重要指標です!
実務での活用:
・マーケティング予算の適正化
・顧客セグメント別の投資判断
・ビジネスモデルの健全性チェック
・投資家へのアピール材料
次のSTEP 27では、チャーンレート分析をさらに深掘りします!
STEP 27では、「チャーンレート(解約率)分析」を学びます。チャーンの原因を特定し、解約を防止するための分析手法を習得しましょう!
📝 練習問題
LTV(顧客生涯価値)とは何ですか?簡潔に説明してください。
LTV(Lifetime Value)とは、1人の顧客が、取引開始から終了までの期間に企業にもたらす利益の総額です。
計算式:
LTV = 平均購買単価 × 購買頻度 × 継続期間
重要な理由:
・顧客獲得コスト(CAC)の適正値を判断
・マーケティング投資の最適化
・ビジネスの持続可能性の評価
あるサブスクリプションサービスの情報:
・月額料金:2,000円
・月次チャーン率:10%
・粗利率:60%
このサービスのLTVはいくらですか?
計算手順:
ステップ1:平均継続月数を計算
平均継続月数 = 1 / 月次チャーン率
= 1 / 0.10 = 10ヶ月
ステップ2:LTVを計算
LTV = 月額料金 × 平均継続月数 × 粗利率
= 2,000円 × 10ヶ月 × 0.60
= 12,000円
補足:
チャーン率を5%に改善できれば、LTVは24,000円に倍増!
以下の情報から、LTV/CAC比率と回収期間を計算し、ビジネスの健全性を評価してください。
・LTV:¥45,000
・CAC:¥18,000
・月額収益:¥3,000
計算:
LTV/CAC比率:
= 45,000 / 18,000 = 2.5倍
回収期間:
= CAC / 月額収益 = 18,000 / 3,000 = 6ヶ月
評価:
・LTV/CAC 2.5倍 → 健全(2〜3倍の範囲)
・回収期間 6ヶ月 → 優秀(12ヶ月以内)
総合評価:ビジネスは健全だが、LTV向上でさらに成長可能
2つのマーケティングチャネルを比較してください。
チャネルA:CAC: 8,000円、獲得顧客のLTV: 40,000円
チャネルB:CAC: 12,000円、獲得顧客のLTV: 60,000円
どちらのチャネルに優先的に投資すべきですか?
分析:
チャネルA:
・LTV/CAC = 40,000 / 8,000 = 5.0倍
・顧客1人あたり利益 = 40,000 – 8,000 = 32,000円
チャネルB:
・LTV/CAC = 60,000 / 12,000 = 5.0倍
・顧客1人あたり利益 = 60,000 – 12,000 = 48,000円
判断:
LTV/CAC比率は同じ(5.0倍)だが、チャネルBの方が1人あたり利益が16,000円多い。
チャネルBを優先しつつ、リスク分散のため両方に投資するのがベスト。
以下のSaaSビジネスの状況を分析し、LTV改善の優先施策を提案してください。
・月額料金:¥5,000
・月次チャーン率:8%
・粗利率:70%
・CAC:¥30,000
・顧客数:500人
現状分析:
平均継続月数:1 / 0.08 = 12.5ヶ月
LTV(売上):5,000 × 12.5 = ¥62,500
LTV(利益):62,500 × 0.70 = ¥43,750
LTV/CAC比率:43,750 / 30,000 = 1.46倍
回収期間:30,000 / 5,000 = 6ヶ月
診断:
・LTV/CAC 1.46倍 → 要改善(目標は3倍以上)
・チャーン率 8% → 業界平均より高め(SaaSは5%以下が理想)
優先施策:
1位:チャーン率改善(最優先)
・チャーン率を8%→5%に改善すれば:
継続月数:12.5ヶ月 → 20ヶ月
LTV:¥43,750 → ¥70,000
LTV/CAC:1.46倍 → 2.33倍
・施策:オンボーディング強化、サポート改善、解約予兆検知
2位:単価アップ
・上位プランへの誘導
・追加機能のアップセル
3位:CAC削減
・紹介プログラムの導入
・コンテンツマーケティング強化
❓ よくある質問
粗利率を考慮しない場合:
・売上ベースのLTV
・過大評価になる危険
粗利率を考慮する場合:
・利益ベースのLTV
・より実態に近い
例:
・売上LTV:100,000円
・粗利率:30%
・利益LTV:100,000円 × 0.30 = 30,000円
推奨:戦略判断には利益ベースのLTVを使う!
SaaS(B2B):
・LTV:数十万〜数百万円
・LTV/CAC:3〜5倍が目標
サブスク(B2C):
・LTV:数千円〜数万円
・継続率が重要
EC(単発購入):
・LTV:数万円
・リピート率がカギ
高額商品(不動産など):
・LTV:数百万〜数千万円
・紹介が重要
1. 平均購買単価を上げる:
・アップセル(上位プランへの誘導)
・クロスセル(関連商品の提案)
・バンドル販売(セット割)
2. 購買頻度を上げる:
・リマインド(メール、プッシュ通知)
・定期購入の提案
・ポイントプログラム
3. 継続期間を延ばす:
・オンボーディング強化
・カスタマーサポート充実
・継続特典(継続割引など)
効果的な順序:
まず継続期間延長 → 次に頻度UP → 最後に単価UP
なぜ3倍なのか:
・1倍:トントン(利益なし)
・2倍:利益はあるが、成長投資余地が少ない
・3倍:健全な利益を確保しつつ、成長投資も可能
内訳の目安:
・CAC回収:1倍分
・運営コスト:1倍分
・利益・成長投資:1倍分
注意:
・業種によって目安は異なる
・5倍以上は「投資不足」の可能性も
初期段階のアプローチ:
1. 業界平均のチャーン率を参考に仮定
2. 競合他社のLTVを推定
3. 保守的な数値で計算
データ蓄積後:
・3ヶ月後:初期チャーン率を測定
・6ヶ月後:より正確なLTV推定
・12ヶ月後:信頼性の高いLTV算出
重要:
・最初は保守的に見積もる
・定期的に再計算して更新
RFM分析:
・過去〜現在のデータ
・顧客の「現在の状態」を分類
・今すぐ打つべき施策を決める
LTV分析:
・将来の予測
・顧客が「生涯で」もたらす価値
・投資判断に使う
組み合わせ方:
1. RFMでセグメント分類
2. 各セグメントのLTVを計算
3. LTVが高いセグメントに注力
例:
・Champions(RFM)→ LTV ¥100,000
・At Risk(RFM)→ LTV ¥60,000
→ At Riskの離脱防止が重要!
学習メモ
ビジネスデータ分析・意思決定 - Step 26