🎯 STEP 44: MECE(漏れなくダブりなく)の原則
問題を構造化し、漏れなく分析しよう
📋 このステップで学ぶこと
- MECEの概念と重要性
- 分類の軸の設定方法
- ロジックツリーへの応用
- MECEチェックの方法
- ビジネス分析での活用
学習時間の目安: 2.5時間
🔍 1. MECEとは
基本概念
MECE(ミーシー)は「Mutually Exclusive, Collectively Exhaustive」の略で、日本語では「漏れなく、ダブりなく」と訳されます。論理的思考の基本であり、問題を整理する最強のフレームワークです。
① ME(Mutually Exclusive)— 相互排他的
・各要素が重複していない(ダブりがない)
・どれか1つにだけ分類できる
例:
✓「男性」と「女性」→ ダブりなし
✗「20代」と「学生」→ ダブりあり(20代学生が両方に該当)
② CE(Collectively Exhaustive)— 全体網羅的
・すべてを網羅している(漏れがない)
・全体を完全にカバー
例:
✓「10代」「20代」「30代」「40代」「50代」「60代以上」→ 全年齢をカバー
✗「10代」「20代」「30代」→ 40代以降が漏れ
なぜMECEが重要か
| 問題 | 発生する弊害 | 具体例 |
|---|---|---|
| 漏れがある | 重要な要素を見落とす 分析が不完全になる 誤った結論に至る |
売上減少の原因分析で「商品力」「価格」だけ見て「流通」「プロモーション」を見落とす |
| ダブりがある | 二重計上になる 分析が混乱する 優先順位が不明確 |
「オンライン販売」と「スマホ販売」で分類すると、スマホでのオンライン販売が重複 |
・思考の整理ができる
・分析の抜け漏れを防ぐ
・議論が明確になる
・意思決定の質が上がる
・チーム内で認識を統一できる
MECEの良い例・悪い例
例1:顧客の分類
・新規顧客
・既存顧客
・VIP顧客
・若年層顧客
問題点:
・VIPは既存顧客と重複
・若年層は新規/既存と重複
・分類軸が混在(購買歴と年齢)
【分類軸1:購買歴】
・新規顧客
・既存顧客
【分類軸2:年齢】
・20代以下
・30-40代
・50代以上
【分類軸3:購買金額】
・VIP(年間100万円以上)
・一般(年間10-100万円)
・ライト(年間10万円未満)
→ 各分類軸を分けて、それぞれでMECEを維持
例2:売上の分解
売上 = 商品A売上 + 商品B売上 + オンライン売上
→ 商品AとBのオンライン売上が重複
方法1:商品別
売上 = 商品A売上 + 商品B売上 + その他商品売上
方法2:チャネル別
売上 = 店舗売上 + オンライン売上
方法3:2次元(商品×チャネル)
売上 = (商品A×店舗) + (商品A×オンライン) + (商品B×店舗) + (商品B×オンライン)
例3:時間の分類
・平日
・週末
・祝日
→ 祝日が平日の場合、重複
方法1:曜日別
・月曜-金曜
・土日
方法2:営業日別
・営業日
・休業日
例4:コストの分類
・人件費
・材料費
・製造コスト
→ 製造コストに人件費と材料費が含まれる
方法1:変動/固定
・変動費(材料費、外注費など)
・固定費(人件費、家賃など)
方法2:直接/間接
・直接費(製品に直接かかる費用)
・間接費(管理部門などの費用)
🎯 2. MECEな分類の軸
代表的な分類軸
MECEな分類を作るには、適切な分類軸を選ぶことが重要です。以下は実務でよく使われる分類軸の例です。
| カテゴリ | 分類軸の例 |
|---|---|
| 時間 | 過去/現在/未来、短期/中期/長期、Q1/Q2/Q3/Q4、平日/休日 |
| 地理 | 国内/海外、東日本/西日本、都市部/郊外/地方 |
| 顧客 | B2B/B2C、新規/既存、個人/法人、年齢層別 |
| 商品 | 商品A/B/C…、カテゴリ別、新商品/既存商品、価格帯別 |
| プロセス | Plan/Do/Check/Act、インプット/プロセス/アウトプット |
| 組織 | 営業/マーケ/開発/管理、本社/支社、正社員/契約社員 |
Pythonで売上のMECE分解を実践
Step 1:商品×チャネルの2次元でMECE分解
※コードは横スクロールできます
Step 2:分解方法による合計の一致確認
Step 3:MECEな分解の可視化
Step 4:MECEチェックリストの出力
分類軸の選び方
① 目的との整合性
何を知りたいかで軸を決める
例:売上減少の原因分析
・商品別? → どの商品が不調か知りたい
・地域別? → どの地域で減少か知りたい
・時系列? → いつから減少か知りたい
② アクションにつながるか
分析結果から具体的な行動が取れるか
良い軸:「商品別」→ 不調商品のテコ入れ可能
悪い軸:「天気別」→ 天気はコントロール不可
③ データの入手可能性
その軸でデータが取れるか
理想:「顧客の購買動機別」→ でもデータがない
現実的代替案:「年齢別」「購買頻度別」
④ 粒度の適切さ
細かすぎず、粗すぎず
粗すぎ:「国内/海外」の2分類 → 洞察が得られない
細かすぎ:都道府県47分類 → 管理困難
適切:「首都圏/関西/その他」の3分類
⑤ ステークホルダーの理解
関係者が理解・納得できる軸か
経営層向け:シンプルな軸(3-5分類)
実務担当者向け:詳細な軸(10分類以上も可)
1次元分解:
売上 = 商品A + 商品B + 商品C
→ シンプル、理解しやすい
2次元分解:
売上 = (商品A×店舗) + (商品A×オンライン) + (商品B×店舗) + …
→ 詳細、クロス分析可能
3次元分解:
売上 = 商品 × チャネル × 地域
→ 超詳細だが複雑、管理困難
推奨:
・まず1次元で全体把握
・重要な部分を2次元で深掘り
・3次元は特殊な場合のみ
🌳 3. ロジックツリーへの応用
ロジックツリーとは
ロジックツリーは、問題や課題を樹形図で分解し、各レベルでMECEを維持しながら全体像を可視化するツールです。
① 要素分解型(What Tree)
「何で構成されるか」を分解
例:売上 = 商品A売上 + 商品B売上 + 商品C売上
② 原因分解型(Why Tree)
「なぜそうなるか」を分解
例:売上減少 ← 客数減少 ← 新規顧客減少 ← 広告効果低下
③ 問題解決型(How Tree)
「どうやって解決するか」を分解
例:売上向上 → 客数増加 → 新規獲得 → Web広告強化
実践例:利益改善のロジックツリー
PythonでMECE検証とアクションプラン
アクションプランの立案
ロジックツリー作成の5ステップ
Step 1:トップレベルを設定
分析対象を明確に(「売上」「利益」「顧客満足度」など)
Step 2:第1レベルで大きく分ける
MECEな分類軸を1つ選び、3-5個程度に分解
Step 3:第2レベルでさらに分解
各要素をMECEに分解(分類軸は統一しなくてOK)
Step 4:MECEチェック
各レベルで漏れ・ダブりチェック、合計が親要素と一致するか確認
Step 5:優先順位付け
データで各要素の大きさを確認し、アクションの優先順位を決定
📝 STEP 44 のまとめ
- MECE:漏れなく(CE)、ダブりなく(ME)
- 分類軸:目的に応じた軸の選び方(時間、地理、顧客、商品など)
- ロジックツリー:問題の構造化と可視化
- MECEチェック:合計の一致で検証
- 実務応用:分析とアクションへの活用
思考を整理し、抜け漏れを防ぐ!
1. 常にMECEを意識
・分析する時は必ずMECEか確認
・漏れがないか?ダブりがないか?
・合計は一致するか?
2. 分類軸を1つに
・同じレベルでは1つの軸
・軸を混ぜない
・次のレベルで軸を変えるのはOK
3. 粒度を統一
・同じレベルは同じ粒度
・「大項目」と「小項目」を混ぜない
・階層を明確に
4. 「その他」の使い方
・重要でない項目をまとめる
・ただし「その他」が大きすぎる場合は要分解
・目安:全体の10%以下
5. 実務での応用場面
会議での議論:論点をMECEに整理 → 議論の抜け漏れ防止
プレゼンテーション:内容をMECEに構成 → 聞き手が理解しやすい
問題解決:原因をMECEに洗い出し → 見落としを防ぐ
データ分析:セグメントをMECEに → 正確な分析
6. よくある失敗
失敗1:分類軸の混在
✗「商品A」「商品B」「オンライン」→ 商品とチャネルが混在
失敗2:粒度の不統一
✗「東京都」「関東地方」→ 都道府県と地方が混在
失敗3:漏れの見落とし
✗「10代」「20代」「30代」→ 40代以降が漏れ
失敗4:過度な細分化
✗ 都道府県47分類 → 管理できない、本質が見えない
分析や報告を行う前に、以下を確認しましょう:
□ 分類軸は1つか?(同じレベルで軸を混ぜていないか)
□ すべて網羅しているか?(漏れがないか)
□ 重複はないか?(ダブりがないか)
□ 粒度は統一されているか?(大項目と小項目を混ぜていないか)
□ 合計は一致するか?(子要素の合計 = 親要素)
□ アクションにつながるか?(分析結果から行動できるか)
□ ステークホルダーが理解できるか?
📝 練習問題
以下の分類はMECEかどうか判定し、問題がある場合は正しいMECE分類を提案してください。
【顧客の分類】
・新規顧客
・リピーター
・VIP顧客
・20代顧客
・法人顧客
問題点の分析:
・購買履歴:新規顧客、リピーター
・購買金額:VIP顧客
・年齢:20代顧客
・顧客タイプ:法人顧客
→ 4つの異なる軸が混ざっている
2. ダブりあり(ME違反)
・VIPリピーターが重複
・20代の新規顧客が重複
・法人のVIP顧客が重複
3. 漏れあり(CE違反)
・30代以上の顧客が漏れ
・休眠顧客が漏れ
正しいMECE分類の提案:
・新規顧客(初回購入)
・既存顧客(リピーター)
・休眠顧客(1年以上購買なし)
✓ MECE:すべての顧客がどれか1つに分類
【提案2:顧客タイプで分類】
・個人顧客
・法人顧客
✓ MECE:シンプルで明確
【提案3:購買金額で分類】
・VIP顧客(年間100万円以上)
・一般顧客(年間10万〜100万円)
・ライト顧客(年間10万円未満)
✓ MECE:金額範囲が重複なし
【提案4:年齢で分類】
・20代以下
・30-40代
・50代以上
✓ MECE:全年齢をカバー
重要な原則:
1. 1つの分類では1つの軸のみ使用
2. 必要なら複数の分類を別々に作成
3. 各分類でMECEを維持
4. 目的に応じて最適な軸を選択
売上が前年比20%減少しました。MECEなロジックツリーを使って原因を分析し、改善策を提案してください。
与えられた情報:
・売上 = 客数 × 客単価
・客数:10,000人 → 8,500人(15%減)
・客単価:5,000円 → 4,700円(6%減)
3レベル以上のロジックツリーを作成し、具体的なアクションプランまで導いてください。
レベル1:売上の分解
├── 客数減少 15%(寄与度:約15%)
└── 客単価減少 6%(寄与度:約5%)
計算:
・前年:10,000人 × 5,000円 = 5,000万円
・今年:8,500人 × 4,700円 = 3,995万円
・減少:1,005万円(20.1%減)
MECEチェック:
✓ ダブりなし:客数と客単価は独立
✓ 漏れなし:売上 = 客数 × 客単価で完全分解
✓ 合計一致:15% + 6% ≈ 20%
レベル2-3:詳細分解
改善アクションプラン:
施策1-1:広告費の回復
・投資:月+100万円(年間1,200万円)
・効果:新規顧客 +500人/月
・売上増:500人 × 4,700円 × 12ヶ月 = 2,820万円
・ROI:(2,820 – 1,200) / 1,200 = 135%
施策1-2:SEO対策の強化
・投資:300万円(一時)
・効果:検索順位回復 → 新規 +300人/月
・売上増:1,692万円/年
・ROI:464%
【優先順位2:既存顧客維持】
施策2-1:スタッフ増員
・投資:+3人 × 400万円 = 1,200万円/年
・効果:サービス品質向上、流出防止 +300人
・売上増:1,692万円
・ROI:41%
施策2-2:品揃え回復
・投資:+100SKU × 5万円 = 500万円
・効果:既存顧客維持 +200人
・売上増:1,128万円
・ROI:126%
【優先順位3:客単価向上】
施策3-1:クロスセル復活
・投資:レコメンド機能 200万円
・効果:購買点数 2.4 → 2.5点に回復
・売上増:8,500人 × 0.1点 × 2,000円 × 12ヶ月 = 2,040万円
・ROI:920%
【総合計画】
投資総額:
・広告:1,200万円、SEO:300万円、スタッフ:1,200万円
・品揃え:500万円、レコメンド:200万円
・合計:3,400万円
期待売上増:
・新規獲得:4,512万円
・既存維持:2,820万円
・客単価:2,040万円
・合計:+9,372万円
ROI:(9,372 – 3,400) / 3,400 = 176%
期待結果(1年後):
・売上:3,995万円 → 5,000万円(目標達成)
・客数:8,500人 → 10,000人(回復)
・客単価:4,700円 → 5,000円(回復)
❓ よくある質問
「その他」の正しい使い方:
1. 個別に重要でない項目をまとめる
例:売上の分解
・商品A:2,000万円(40%)
・商品B:1,500万円(30%)
・商品C:1,000万円(20%)
・その他:500万円(10%)
→ 合計5,000万円で一致
2. 「その他」が大きすぎる場合
✗ その他:2,500万円(50%)
→ これは問題!さらに分解が必要
目安:「その他」は全体の10%以下
3. 「その他」の中身を明示
良い例:「その他(商品D〜Zの合計)」
悪い例:「その他」だけ → 何が入っているか不明
原則:
「その他」を使ってもMECEは維持可能
ただし、適切なサイズ感を保つこと
実務的なアプローチ:
1. 完璧を求めすぎない
・100%のMECEは難しい
・80-90%のMECEで実用十分
・スピードも重要
2. 重要な部分にフォーカス
・全体の80%を占める部分をMECEに
・残り20%は「その他」でまとめる
・パレートの法則の応用
3. イテレーティブに改善
ステップ1:粗いMECEで全体把握
ステップ2:重要部分を詳細化
ステップ3:必要に応じて精緻化
例:
第1版(粗い):国内70%、海外30%
第2版(詳細化):関東40%、関西20%、その他国内10%、海外30%
MECEにこだわりすぎる危険:
・分析麻痺(Analysis Paralysis)
・時間の浪費
・本質を見失う
バランスの取り方:
・期限を決める
・「完璧」より「十分」を目指す
・アクションにつながるか常に確認
・フィードバックで改善
段階数の目安:
2段階:
・エグゼクティブサマリー
・概要把握
・経営層への報告
例:売上 → (商品別) → (チャネル別)
3段階:
・標準的な分析
・問題の構造化
・実務での最頻
4-5段階:
・詳細分析
・根本原因の特定
・専門的な検討
6段階以上:
・通常は不要
・複雑すぎて管理困難
・本質が見えなくなる
掘り下げを止めるタイミング:
1. アクションが明確になった
2. データがない
3. これ以上分解しても洞察が得られない
4. 十分な粒度に達した
原則:
・目的に応じた深さ
・アクションにつながる粒度
・管理可能な複雑さ
・3段階を標準に、必要に応じて増減
学習メモ
ビジネスデータ分析・意思決定 - Step 44