📉 STEP 27: チャーンレート(解約率)分析
顧客離脱の要因を分析してリテンション施策を設計しよう
📋 このステップで学ぶこと
- チャーンレートの定義と計算方法
- 月次・年次チャーンの違い
- チャーン要因の分析
- リテンション施策の設計
- PythonとExcelでの実装
学習時間の目安:3時間
🔍 1. チャーンレート(解約率)とは
基本概念
一定期間に、サービスを解約・離脱した顧客の割合
なぜチャーンレートが重要なのか:
1. LTVへの直接的な影響
・チャーン率が高い → 継続期間が短い → LTV低下
・例:チャーン10% → 平均10ヶ月継続
・例:チャーン5% → 平均20ヶ月継続
2. ビジネスの成長率
・新規獲得 – チャーン = 純成長
・チャーンが高いと、いくら獲得しても成長しない
3. コスト効率
・新規獲得コスト > 既存顧客維持コスト
・チャーン改善 = コスト削減
4. 健全性の指標
・チャーン率の推移でビジネスの健全性を判断
・悪化トレンド = 要注意シグナル
チャーンレートの計算方法
月次チャーンレート = (期間中の解約顧客数 / 期間開始時の顧客数) × 100%
例1:シンプルな計算
・月初の顧客数:1,000人
・月間解約数:50人
・月次チャーン率 = 50 / 1,000 × 100% = 5%
例2:新規獲得がある場合
・月初の顧客数:1,000人
・月間新規獲得:100人
・月間解約:50人
・月末の顧客数:1,050人
重要:新規獲得は含めず、月初の1,000人を分母にする
チャーン率 = 50 / 1,000 × 100% = 5%
(月末の1,050人を分母にするのは間違い!)
月次と年次チャーンの関係
単純計算(近似値):
年次チャーン ≈ 月次チャーン × 12
・月次チャーン5% → 年次チャーン ≈ 60%
・月次チャーン3% → 年次チャーン ≈ 36%
正確な計算:
年次チャーン = 1 – (1 – 月次チャーン)^12
・月次チャーン5%の場合:
年次チャーン = 1 – (1 – 0.05)^12
= 1 – 0.95^12
= 1 – 0.540
= 46%(単純計算の60%より低い)
逆算(年次から月次):
月次チャーン = 1 – (1 – 年次チャーン)^(1/12)
チャーン率の目安
| 業種・業態 | 月次チャーン率 | 年次チャーン率 | 備考 |
|---|---|---|---|
| SaaS(B2B) | 0.5〜1% | 5〜10% | 優秀な水準 |
| SaaS(B2C) | 1〜2% | 10〜20% | 許容範囲 |
| 動画配信 | 3〜5% | 30〜45% | 競争激しい |
| フィットネス | 5〜10% | 45〜70% | 季節変動大 |
| EC会員 | 2〜4% | 20〜40% | 購買頻度依存 |
📊 2. チャーン分析の実践
Pythonでの実装
チャーン分析クラスの実装
🎯 3. チャーン要因の分析
なぜ顧客は離脱するのか
1. 価値を感じない(最大の理由)
・期待していた効果が得られない
・使い方が分からない
・使う機会がない
2. 価格に不満
・高すぎる
・費用対効果が合わない
・競合の方が安い
3. サポートへの不満
・問い合わせに回答がない
・問題が解決しない
・対応が遅い
4. 競合への乗り換え
・より良いサービスを発見
・機能が充実している
・友人の紹介
5. ライフステージの変化
・引っ越し、転職
・ニーズの変化
・予算の削減
チャーン予測モデル
🚀 4. リテンション施策の設計
段階別リテンション施策
目標:価値を早期に実感させる
施策:
・ウェルカムメール
・使い方チュートリアル
・初回利用の成功体験
・専任サポート
目標:習慣化させる
施策:
・利用リマインド
・便利機能の紹介
・利用データのフィードバック
・コミュニティへの参加促進
目標:長期継続
施策:
・継続特典
・新機能の提供
・ロイヤリティプログラム
・定期的なアップデート
目標:離脱を防ぐ
施策:
・パーソナライズドオファー
・特別割引
・電話でのフォローアップ
・解約理由アンケート
施策効果のシミュレーション
📑 5. Excelでの実装
チャーン率計算シート
📝 STEP 27 のまとめ
1. チャーンレートの基本
- 解約顧客の割合を測定
- 計算式:解約数 ÷ 期間開始時顧客数
2. LTVへの影響
- 平均継続期間 = 1 / チャーン率
- チャーン率改善でLTV向上
3. チャーン要因
- 価値を感じない(最大の理由)
- 価格、サポート、競合、ライフステージ変化
4. リテンション施策
- 段階別に最適な対策を実施
- 早期検知と介入が重要
チャーン率改善は、最も費用対効果が高い成長戦略です!
チャーン率1%改善の威力:
・月次チャーン5% → 4%に改善
・平均継続期間:20ヶ月 → 25ヶ月(+25%!)
・LTV:14,000円 → 17,500円(+25%!)
成功のコツ:
・早期にチャーンリスクを検知
・データで要因を特定
・段階別に最適な施策
・継続的にモニタリング
次のSTEP 28では、バスケット分析で商品の同時購買パターンを発見します!
STEP 28では、「バスケット分析(アソシエーション分析)」を学びます。「この商品を買った人はこれも買っている」というパターンを発見し、クロスセルに活用しましょう!
📝 練習問題
チャーンレート(解約率)とは何ですか?簡潔に説明してください。
チャーンレート(Churn Rate)とは、一定期間にサービスを解約・離脱した顧客の割合です。
計算式:
チャーン率 = 解約顧客数 / 期間開始時の顧客数 × 100%
例:
・月初顧客数:1,000人
・月間解約数:50人
・チャーン率 = 50 / 1,000 × 100% = 5%
重要な理由:
・LTVに直接影響(チャーン率↑ → LTV↓)
・ビジネスの成長率に影響
・既存顧客維持はコスト効率が良い
あるサブスクサービスの情報:
・月初顧客数:2,000人
・月間新規獲得:200人
・月間解約:100人
・月末顧客数:2,100人
月次チャーン率はいくらですか?
また、このペースが続くと、平均継続期間は何ヶ月ですか?
計算手順:
ステップ1:月次チャーン率を計算
チャーン率 = 解約数 / 月初顧客数 × 100%
= 100人 / 2,000人 × 100%
= 5%
注意:
・分母は月初の2,000人を使う
・月末の2,100人や、新規獲得200人は関係ない!
ステップ2:平均継続期間を計算
平均継続期間 = 1 / 月次チャーン率
= 1 / 0.05
= 20ヶ月
補足:
月額1,000円なら、LTV = 1,000円 × 20ヶ月 = 20,000円
チャーンを4%に改善できれば、継続期間25ヶ月に!
月次チャーン率5%の場合、年次チャーン率はいくらになりますか?
正確な計算と近似計算の両方を求めてください。
計算:
近似計算:
年次チャーン ≈ 月次チャーン × 12
= 5% × 12 = 60%
正確な計算:
年次チャーン = 1 – (1 – 月次チャーン)^12
= 1 – (1 – 0.05)^12
= 1 – 0.95^12
= 1 – 0.540
= 46%
解釈:
・正確な計算(46%)の方が近似(60%)より低い
・これは複利効果の逆(毎月の母数が減る)
・投資家への報告では正確な計算を使うべき
2つの改善施策を検討しています。どちらを優先すべきですか?
現状:
・顧客数:10,000人
・月次チャーン率:6%
・月額:2,000円
・粗利率:70%
施策A:チャーン率改善
・チャーン率を6% → 5%に改善
・コスト:500万円(年間)
施策B:新規獲得強化
・月間新規獲得を100人 → 150人に増加
・コスト:500万円(年間)
施策Aの効果:
【現状】
・平均継続期間 = 1/0.06 = 16.7ヶ月
・LTV = 2,000円 × 16.7ヶ月 × 0.7 = 23,380円
【改善後】
・平均継続期間 = 1/0.05 = 20ヶ月
・LTV = 2,000円 × 20ヶ月 × 0.7 = 28,000円
・LTV向上 = 28,000 – 23,380 = +4,620円/人
【年間効果】
・既存10,000人全員に効果
・年間利益増 = 4,620円 × 10,000人 = 4,620万円
・純利益:4,120万円、ROI:824%
施策Bの効果:
・年間追加獲得 = 50人 × 12ヶ月 = 600人
・年間利益増 = 23,380円 × 600人 = 1,403万円
・純利益:903万円、ROI:181%
結論:
施策Aの方が圧倒的に効果大!
「穴の空いたバケツに水を注いでも無駄」→ まず穴(チャーン)を塞ぐべき!
以下のSaaSサービスのチャーン状況を分析し、改善提案をしてください。
・月次チャーン率:8%
・初月解約率:15%(1ヶ月目で解約する割合)
・2〜3ヶ月目解約率:10%
・4ヶ月目以降解約率:5%
どの段階に問題があり、どのような施策が有効ですか?
問題分析:
最大の問題:初月解約率15%(非常に高い)
・初月に全体の解約の大部分が集中
・オンボーディングが機能していない可能性
・期待と現実のギャップが大きい
2〜3ヶ月目:10%(まだ高い)
・習慣化に失敗している
・価値を十分に感じていない
4ヶ月目以降:5%(許容範囲)
・習慣化した顧客は継続傾向
改善提案(優先順位順):
1位:オンボーディング強化(最優先)
・初回ログイン時のチュートリアル導入
・7日目にフォローアップコール
・「初回成功体験」までの導線設計
・期待値調整(申込前の説明改善)
2位:アクティベーション施策
・2週目からの定期メール
・便利機能の紹介
・利用状況に応じたTips配信
3位:早期離脱検知
・3日間ログインなしでアラート
・リスク顧客への自動フォロー
期待効果:
初月解約率を15%→8%に改善すれば、全体の月次チャーンは約5%に低下!
❓ よくある質問
SaaS(B2B):
・年次チャーン率:5〜7%(優秀)
・月次チャーン率:0.5〜1%(目標)
SaaS(B2C):
・年次チャーン率:10〜20%
・月次チャーン率:1〜2%
動画配信サービス:
・月次チャーン率:3〜5%
フィットネスジム:
・月次チャーン率:5〜10%
重要:
絶対値より、トレンドが重要。悪化していないか常にモニタリング!
チャーン率(解約率):
・離脱した顧客の割合
・例:チャーン率5%
リテンション率(継続率):
・継続している顧客の割合
・例:リテンション率95%
関係:
リテンション率 = 100% – チャーン率
・チャーン5% = リテンション95%
使い分け:
・チャーン率:問題の大きさを強調したい時
・リテンション率:ポジティブに表現したい時
有料顧客のチャーン:
・定義:有料プランを解約した割合
・重要度:最も重要
・目標:できるだけ低く
トライアル→有料転換率:
・定義:トライアルから有料になった割合
・別の指標として管理
・例:転換率20%
推奨:
・有料顧客チャーンをメイン指標に
・トライアル転換率も別途追跡
・混ぜると正確な分析ができない
なぜオンボーディングが重要か:
・解約の多くは初期(1〜3ヶ月)に集中
・初期に価値を感じないと継続しない
・一度習慣化すれば継続しやすい
効果的なオンボーディング:
1. 初回ログイン時のチュートリアル
2. 「初回成功体験」までの導線設計
3. 7日目のフォローアップ
4. 利用状況に応じたTips配信
効果の目安:
オンボーディング改善で、チャーン率20〜30%低下も可能!
1. 解約時アンケート:
・解約手続き中に選択式で理由を聞く
・回答率:高い(必須にできる)
・注意:本音を言わないことも
2. フォローアップインタビュー:
・解約後に電話やメールで詳細を聞く
・回答率:低いが詳細な情報
・高LTV顧客に優先的に
3. 利用データ分析:
・解約前の行動パターンを分析
・ログイン頻度低下、機能利用減少など
・本人が気づいていない理由も発見
推奨:
3つを組み合わせて、定量×定性で把握
計算式:
ネットチャーン = (解約による減収 – アップセル等の増収) / 期初MRR
例:
・期初MRR:1,000万円
・解約による減収:50万円
・アップセルによる増収:70万円
・ネットチャーン = (50万 – 70万) / 1,000万 = -2%
意味:
・ネガティブチャーン = 新規獲得なしでも収益成長
・SaaSの理想的な状態
・顧客が成功している証拠
達成のコツ:
・段階的なプラン設計
・使用量に応じた課金
・アドオン機能の充実
学習メモ
ビジネスデータ分析・意思決定 - Step 27