STEP 4:ビジネス課題の発見と定義

🔍 STEP 4: ビジネス課題の発見と定義

正しい課題を見つけ、構造化するスキルを身につけよう

📋 このステップで学ぶこと

  • なぜ「正しい課題を見つけること」が最も重要なのか
  • 課題発見の3つのアプローチ(トップダウン、ボトムアップ、外部情報)
  • MECEの考え方 – 漏れなく、ダブりなく整理する技術
  • ロジックツリー – 課題を分解して構造化する方法
  • SMART基準で課題を明確に定義する

🎯 1. なぜ「正しい課題を見つけること」が重要なのか

間違った課題を解いても意味がない

データ分析で最もよくある失敗は何でしょうか?

実は、「分析手法が間違っている」ではなく、「そもそも解くべき課題が間違っている」というケースが非常に多いのです。

📝 医者の診断で例えてみましょう

シーン:患者さんが「頭が痛い」と訴えています

❌ 悪い医者

「頭が痛いのですね。では、頭痛薬を処方します」

→ 実は原因は「ひどい肩こり」だった。頭痛薬を飲んでも、根本原因が解決していないので、すぐにまた頭痛が起きる

✅ 良い医者

「頭が痛いのですね。いつから?どこが?どんな風に?最近の生活は?」と詳しく聞く

  • デスクワークが増えた → 姿勢が悪い → 肩こり → 頭痛

「根本原因は肩こりですね。姿勢の改善とストレッチを処方します」

→ 根本原因を解決したので、頭痛が再発しなくなった

ビジネスの課題解決も同じです。
「見えている問題」ではなく「本当の原因」を見つけることが大切。

「課題設定力」がデータアナリストの価値を決める

データ分析のスキルは、大きく2つに分けられます。

🔧 技術的スキル

Excel、Python、SQLなどのツールを使いこなす力。統計手法や機械学習の知識。

特徴:AIやツールの進化で、ある程度代替可能になってきている。

🧠 課題設定スキル

「何を分析すべきか」を見極める力。ビジネスの本質を理解し、正しい問いを立てる力。

特徴:AIでは代替が難しい、人間ならではのスキル。

💡 AIの時代こそ「課題設定力」が重要

AIは「与えられた課題を解く」のは得意ですが、「解くべき課題を見つける」のは苦手です。

つまり、「正しい問いを立てられる人」がますます重要になっています。

分析の腕前よりも、「何を分析すべきか」を決められる力こそが、データアナリストの真の価値です。

「課題」と「問題」の違いを理解しよう

日常会話では「課題」と「問題」を同じ意味で使いますが、ビジネスでは区別することが大切です。

用語 定義
現状(As-Is) 今の状態 月間売上が500万円
あるべき姿(To-Be) 目標とする状態 月間売上600万円を目指したい
問題(Problem) 現状とあるべき姿のギャップ 売上が100万円足りない
課題(Issue) 問題を解決するために取り組むべきこと 新規顧客を20%増やす
【問題と課題の関係図】 あるべき姿(To-Be):売上600万円 ↑ │ ←← 問題(ギャップ):100万円不足 │ 現状(As-Is):売上500万円 課題 = このギャップを埋めるために「何をすべきか」 例:新規顧客を増やす、客単価を上げる、リピート率を上げる、など
💭 課題を明確にすることの効果

「売上が足りない」という問題だけでは、何をすればいいかわかりません。「新規顧客を20%増やす」という課題に落とし込むことで、初めて具体的なアクションを考えられます。データ分析も、課題が明確でないと「何のために分析するのか」がわからなくなります。

🔍 2. 課題発見の3つのアプローチ

課題はどうやって見つければいいのでしょうか?3つのアプローチがあります。

アプローチ1:トップダウン型(経営目標から逆算)

経営目標や事業計画から逆算して、課題を特定するアプローチです。

📊 トップダウン型の流れ

ステップ1:経営目標を確認

「今期の売上目標は前年比120%」

ステップ2:現状とのギャップを把握

「現在のペースだと110%しか達成できない見込み」

ステップ3:ギャップの原因を分解

「新規顧客数が計画を下回っている」「既存顧客の購入頻度が下がっている」

ステップ4:課題を特定

「新規顧客獲得のマーケティング施策を改善する」「既存顧客へのリテンション施策を強化する」

✅ トップダウン型のメリット
  • 経営目標と直結しているので、重要度が高い
  • 上層部の支持を得やすい
  • 成果が出れば、ビジネスインパクトが大きい

アプローチ2:ボトムアップ型(現場の声から発見)

現場で起きている問題や違和感から課題を見つけるアプローチです。

📊 ボトムアップ型の流れ

ステップ1:現場の声を集める

「最近、お客様から『商品が見つけにくい』というクレームが増えている」

ステップ2:データで裏付けを取る

「サイトの離脱率を調べると、商品一覧ページで80%が離脱している」

ステップ3:影響範囲を確認

「月間で約1000人が離脱 → 推定損失は月100万円」

ステップ4:課題を特定

「商品検索・絞り込み機能を改善して、離脱率を50%に下げる」

✅ ボトムアップ型のメリット
  • 現場のリアルな問題を解決できる
  • 実行する人が納得感を持ちやすい
  • すぐに効果が見えやすい

アプローチ3:外部情報型(市場・競合から発見)

市場動向、競合他社、業界トレンドから課題を見つけるアプローチです。

📊 外部情報型の流れ

ステップ1:外部情報を収集

「競合A社がサブスクリプションモデルを導入し、急成長している」

ステップ2:自社への影響を分析

「このままでは顧客を奪われる可能性がある」

ステップ3:機会と脅威を評価

「サブスクモデルは当社にも適用可能。先行者利益を得られるかも」

ステップ4:課題を特定

「3ヶ月以内にサブスクリプションモデルの導入可能性を検討する」

✅ 外部情報型のメリット
  • 競合に先んじることができる
  • 市場の変化に対応できる
  • 新しい成長機会を発見できる

3つのアプローチの使い分け

アプローチ 適した状況 注意点
トップダウン型 経営目標の達成が求められる時、全社的な課題に取り組む時 現場の実情と乖離していないか確認が必要
ボトムアップ型 現場に問題が山積している時、すぐに効果を出したい時 小さな改善に留まり、大きな課題を見逃す可能性
外部情報型 市場が急変している時、新規事業を検討する時 情報の信頼性を確認、自社への適用可能性を検討
💡 3つのアプローチを組み合わせるのがベスト

どれか1つだけではなく、3つを組み合わせることで、多角的に課題を発見できます。例えば、「経営目標(トップダウン)を達成するために、現場の声(ボトムアップ)を聞きながら、競合の動き(外部情報)も参考にする」というアプローチが理想的です。

📊 3. MECE – 漏れなく、ダブりなく整理する

MECEとは何か?

MECE(ミーシー)は、「Mutually Exclusive, Collectively Exhaustive」の略で、日本語では「漏れなく、ダブりなく」という意味です。

課題を整理したり、選択肢を検討したりする時に、「見落とし」や「重複」がないようにするための考え方です。

📖 MECEの意味を分解

Mutually Exclusive(相互排他的)= 要素同士が重ならない(ダブりなし)
Collectively Exhaustive(全体網羅的)= 全体として漏れがない

つまり、「全部を網羅していて、かつ重複がない」状態のことです。

MECEの具体例

身近な例で、MECEかどうかを判断してみましょう。

✅ MECEな分類

年齢で分ける場合:

  • 10代以下
  • 20代
  • 30代
  • 40代
  • 50代以上

→ すべての人がどれか1つに当てはまる。重複もない。

❌ MECEではない分類

顧客を分ける場合:

  • 男性
  • 若者
  • 東京在住

→ 「東京在住の若い男性」はどこに入る?ダブりがある
→ 「大阪在住の中年女性」はどこにも入らない。漏れがある

よく使うMECEの切り口

課題を分解する際に、よく使われるMECEの切り口を紹介します。

切り口 分解例 使う場面
時間軸 過去・現在・未来
短期・中期・長期
計画を立てる時、トレンドを分析する時
プロセス 認知→興味→比較→購入→リピート 顧客行動を分析する時、ボトルネックを探す時
対象 新規顧客・既存顧客
法人・個人
ターゲットを絞る時、施策を考える時
地域 国内・海外
関東・関西・その他
エリア戦略を考える時
要素分解 売上 = 客数 × 客単価
利益 = 売上 – コスト
KPIを分解する時、原因を特定する時
対比 内部・外部
強み・弱み
状況を整理する時(SWOT分析など)

MECEを使った課題分解の例

📊 例:「売上が下がっている」という問題をMECEに分解

ステップ1:売上の公式で分解

売上 = 客数 × 客単価

  • 客数が減っている?
  • 客単価が下がっている?

ステップ2:客数をさらに分解

客数 = 新規顧客 + 既存顧客

  • 新規顧客が減っている?
  • 既存顧客(リピーター)が減っている?

ステップ3:新規顧客をさらに分解

新規顧客の流入経路で分解

  • Web広告経由が減っている?
  • SNS経由が減っている?
  • 紹介経由が減っている?
  • 自然検索経由が減っている?

→ 結論

分析の結果、「Web広告経由の新規顧客が50%減少」していることが判明。
課題は「Web広告の効果改善」に絞られた!

💡 MECEの4つの効果
  • 見落としを防げる:すべての可能性を検討できる
  • 議論が噛み合う:同じフレームワークで話せる
  • 優先順位をつけやすい:分解した要素を比較できる
  • 説明しやすい:構造的に整理されているので、相手に伝わりやすい
⚠️ MECEの注意点

完璧なMECEを目指しすぎない

現実のビジネスでは、完全にMECEにできないことも多いです。「だいたいMECE」で十分。完璧を目指して時間をかけすぎるのは本末転倒です。

分解しすぎない

細かく分解しすぎると、かえって複雑になります。「これ以上分解しても意味がない」と思ったら止めましょう。通常は2〜3階層で十分です。

🌳 4. ロジックツリー – 課題を構造化する

ロジックツリーとは何か?

ロジックツリーは、課題や問題をツリー状(木の枝のように)に分解・構造化するフレームワークです。

MECEの考え方を使って、大きな課題を小さな課題に分解していきます。これにより、「どこに問題があるか」「何から取り組むべきか」が明確になります。

📝 家系図で例えてみましょう

ロジックツリーは「家系図」に似ています。

  • 一番上に「祖先(大きな課題)」がいて
  • その下に「子ども(中くらいの課題)」がいて
  • さらに下に「孫(小さな課題)」がいる

枝分かれしながら、どんどん細かくなっていくイメージです。

ロジックツリーの3つの種類

ロジックツリーには、目的によって3つの種類があります。

1️⃣ Whatツリー(要素分解)

目的:「何で構成されているか」を分解する

問いかけ:「〇〇は何でできている?」

使う場面:売上の構成要素を把握したい時、全体像を理解したい時

2️⃣ Whyツリー(原因追究)

目的:「なぜそうなるのか」原因を探る

問いかけ:「なぜ?」を繰り返す

使う場面:問題の根本原因を特定したい時

3️⃣ Howツリー(解決策検討)

目的:「どうやって解決するか」を考える

問いかけ:「どうすれば?」

使う場面:解決策を網羅的に洗い出したい時

Whatツリーの例:売上を分解する

【Whatツリー:売上の構成要素】 売上 ├─ 客数 │ ├─ 新規顧客数 │ │ ├─ Web広告経由 │ │ ├─ SNS経由 │ │ ├─ 紹介経由 │ │ └─ 自然検索経由 │ │ │ └─ 既存顧客数(リピーター) │ ├─ 月1回以上購入 │ ├─ 3ヶ月に1回購入 │ └─ それ以下 │ └─ 客単価 ├─ 購入点数 │ ├─ 1点のみ購入 │ └─ 複数点購入 │ └─ 商品単価 ├─ 高価格帯(1万円以上) ├─ 中価格帯(3千〜1万円) └─ 低価格帯(3千円未満)
💡 Whatツリーの使い方

このように売上を分解すると、「どこに問題があるか」を特定しやすくなります。例えば、「売上が下がった」原因が「Web広告経由の新規顧客」にあるとわかれば、そこに集中して対策を考えられます。

Whyツリーの例:売上減少の原因を探る

【Whyツリー:売上が下がった原因】 売上が下がった │ ├─ なぜ?→ 客数が減った │ │ │ ├─ なぜ?→ 新規顧客が減った │ │ │ │ │ ├─ なぜ?→ Web広告の効果が下がった │ │ │ │ │ │ │ └─ なぜ?→ 競合が増えてCPCが高騰した ← 根本原因① │ │ │ │ │ └─ なぜ?→ 紹介が減った │ │ │ │ │ └─ なぜ?→ 紹介キャンペーンを終了した ← 根本原因② │ │ │ └─ なぜ?→ 既存顧客が減った(解約) │ │ │ └─ なぜ?→ 競合に乗り換えた │ │ │ └─ なぜ?→ 競合が値下げした ← 根本原因③ │ └─ なぜ?→ 客単価が下がった(今回は原因ではなかった)
💡 「なぜ?」は5回繰り返す(5 Whys)

トヨタ生産方式で有名な「5 Whys(なぜなぜ分析)」という手法があります。「なぜ?」を5回繰り返すと、表面的な原因ではなく根本原因(Root Cause)にたどり着けます。

上の例では、「売上が下がった」という表面的な問題から、「競合が増えてCPCが高騰」「紹介キャンペーン終了」「競合の値下げ」という具体的な根本原因が見つかりました。

Howツリーの例:売上を上げる方法を考える

【Howツリー:売上を上げるには?】 売上を上げるには? │ ├─ 客数を増やす │ │ │ ├─ 新規顧客を増やす │ │ ├─ Web広告を最適化する │ │ ├─ SNSマーケティングを強化する │ │ ├─ 紹介キャンペーンを再開する │ │ └─ SEO対策を行う │ │ │ └─ 既存顧客の離脱を防ぐ │ ├─ ロイヤルティプログラムを導入する │ ├─ 定期的なメール配信を行う │ └─ 解約理由をヒアリングして改善する │ └─ 客単価を上げる │ ├─ 購入点数を増やす │ ├─ セット販売を提案する │ ├─ レコメンド機能を強化する │ └─ 〇〇円以上で送料無料にする │ └─ 高単価商品を売る ├─ プレミアム商品を開発する ├─ アップセル提案を行う └─ 高単価商品の露出を増やす
✅ Howツリーの使い方

Howツリーを作ると、解決策を網羅的に洗い出せます。その中から、インパクトが大きく実行しやすいものを選んで実行します。

上の例では、「紹介キャンペーンを再開する」「セット販売を提案する」など、具体的なアクションが見えてきました。

ロジックツリーの作り方

📝 ロジックツリー作成の5ステップ

ステップ1:頂点(テーマ)を決める

「売上を上げる」「コストを削減する」「顧客満足度を上げる」など

ステップ2:MECEを意識して分解する

漏れなく、ダブりなく、第1階層を作る

ステップ3:さらに細かく分解する

第2階層、第3階層…と深掘りしていく

ステップ4:分解を止める判断をする

「これ以上分解しても意味がない」「具体的なアクションが見えた」ところで止める

ステップ5:見直して調整する

漏れやダブりがないか確認。必要なら追加・修正

⚠️ ロジックツリーの落とし穴
  • 深すぎる分解:4階層以上になると複雑すぎて使いにくい。通常は2〜3階層で十分
  • MECEになっていない:重複や漏れがあると、分析が不完全になる
  • 抽象的すぎる:「改善する」ではなく「〇〇を△△にする」と具体的に
  • 作って満足:ロジックツリーは分析のツール。作ることが目的ではない

🎯 5. SMART基準 – 課題を明確に定義する

SMARTとは何か?

課題やゴールを設定する際の品質チェック基準です。STEP 3でも紹介しましたが、ここでさらに詳しく学びます。

SMARTを満たす課題定義にすることで、「何をすべきか」が明確になり、進捗も測定しやすくなります。

頭文字 意味 チェックポイント
S Specific(具体的) 誰が見ても同じ解釈ができるか?
M Measurable(測定可能) 数値で測れるか?達成したかわかるか?
A Achievable(達成可能) 現実的に達成できるか?無理すぎないか?
R Relevant(関連性) ビジネス目標と関連があるか?意味があるか?
T Time-bound(期限) いつまでに達成するか決まっているか?

SMARTの各要素を詳しく見る

S – Specific(具体的)

❌ 具体的でない例
  • 「売上を増やす」
  • 「顧客満足度を上げる」
  • 「業務を効率化する」

→ 人によって解釈が異なる。何をすればいいかわからない。

✅ 具体的な例
  • 「ECサイトの月間売上を500万円から600万円に増やす」
  • 「NPSスコアを30から50に上げる」
  • 「レポート作成時間を月20時間から10時間に短縮する」

→ 誰が見ても同じ理解ができる。

M – Measurable(測定可能)

📏 測定できないと、こんな問題が起きる
  • 達成したかどうか判断できない
  • 進捗状況がわからない
  • 改善したかどうかわからない

測定可能にするポイント:

  • 数値化する:「増やす」→「20%増やす」
  • 指標を決める:「満足度を上げる」→「NPSを50にする」
  • Yes/Noで判断できる:「〇〇を導入する」→導入したかどうかは明確

A – Achievable(達成可能)

⚠️ 達成不可能な目標はモチベーションを下げる

高すぎる目標の例:

「来月までに売上を10倍にする」
→ 現実的に不可能。チームのモチベーションが下がる。

低すぎる目標の例:

「来年までに売上を1%増やす」
→ 簡単すぎて、努力する意味を感じない。

✅ 適切な目標設定のコツ
  • ストレッチ目標:少し頑張れば達成できるレベル(現状の10〜30%増など)
  • 過去の実績を参考に:「去年は15%成長したから、今年は20%を目指す」
  • リソースを考慮:予算、人員、時間で達成可能か確認

R – Relevant(関連性)

🔗 「関連性」が重要な理由

どんなに頑張って達成しても、ビジネス目標と関係なければ意味がありません

関連性がない例:

会社の目標が「利益を増やすこと」なのに、「SNSフォロワーを10万人増やす」を課題にする。
→ フォロワーが増えても、売上や利益につながらなければ意味がない。

関連性がある例:

「SNSフォロワーを10万人増やし、そこから月間100人の新規顧客を獲得する」
→ 売上・利益につながる目標になっている。

T – Time-bound(期限)

⏰ 期限がないと、こんな問題が起きる
  • いつまでも先延ばしにしてしまう
  • 緊急度がわからない
  • 進捗管理ができない

期限設定のポイント:

  • 「いつか」ではなく「3ヶ月以内」「12月末まで」と明確に
  • マイルストーン(中間目標)も設定すると進捗管理しやすい
  • 期限が長すぎると緊張感がなくなるので、3ヶ月程度が適切

SMARTへの変換例

【SMARTへの変換例】 ■ Before(SMARTでない) 「お客様の満足度を上げたい」 ■ After(SMARTに変換) S(具体的):ECサイトの顧客満足度を上げる M(測定可能):NPSスコアを30から50に上げる A(達成可能):業界平均が45なので、50は現実的 R(関連性):満足度が上がればリピート率が上がり、売上増に貢献 T(期限):6ヶ月以内に達成 → 完成形 「6ヶ月以内に、ECサイトのNPSスコアを30から50に上げる」
💡 SMARTの覚え方

何を(S)、どれくらい(M)、本当にできる?(A)、意味ある?(R)、いつまで?(T)」と自分に問いかけましょう。5つすべてに答えられれば、SMARTな課題定義ができています。

📋 6. 実践:課題発見から定義までの流れ

ここまで学んだ内容を使って、実際に課題を発見・定義する流れを見てみましょう。

📊 ケーススタディ:アパレルECサイトの売上改善

【状況】

アパレルECサイトを運営。今期の売上目標は前年比120%だが、現状のペースでは110%にしか届かない見込み。

ステップ1:課題発見(3つのアプローチ)

【課題発見のアプローチ】 ■ トップダウン型 経営目標:売上前年比120% 現状:110%ペース ギャップ:10%不足(約1,000万円) ■ ボトムアップ型 カスタマーサポートの声: 「商品ページがわかりにくい」「サイズが合わなくて返品したい」 Webチームの声: 「カートに入れてから離脱する人が多い」 ■ 外部情報型 競合A社がAIサイズ推奨機能を導入して好評 業界トレンドとしてパーソナライゼーションが注目されている

ステップ2:MECEで分解

【売上のMECE分解】 売上 = 訪問者数 × 購入率 × 客単価 ■ 訪問者数:前年比105%(やや増加)→ 問題なし ■ 購入率:前年比95%(やや減少)→ 要注目 ⚠️ ■ 客単価:前年比105%(やや増加)→ 問題なし → 購入率の低下が問題と特定

ステップ3:ロジックツリーで深掘り

【Whyツリー:購入率が下がった原因】 購入率が下がった │ ├─ なぜ?→ カート離脱率が高い(40%→50%に悪化) │ │ │ └─ なぜ?→ サイズ選びで迷っている │ │ │ └─ なぜ?→ サイズ情報がわかりにくい ← 根本原因① │ └─ なぜ?→ 商品ページの直帰率が高い │ └─ なぜ?→ 商品画像だけで判断できない │ └─ なぜ?→ 着用イメージがわかりにくい ← 根本原因②

ステップ4:SMARTで課題を定義

✅ SMART形式の課題定義

課題1:サイズ選びの改善

「3ヶ月以内に、AIサイズ推奨機能を導入し、サイズ理由の返品率を現在の15%から10%に削減する」

  • S:AIサイズ推奨機能の導入
  • M:返品率15%→10%
  • A:競合も導入済みで技術的に可能
  • R:返品減少→コスト削減→利益増
  • T:3ヶ月以内

課題2:商品ページの改善

「2ヶ月以内に、全商品に着用動画を追加し、商品ページの直帰率を60%から45%に改善する」

  • S:着用動画の追加
  • M:直帰率60%→45%
  • A:社内で撮影可能
  • R:直帰率改善→購入率向上→売上増
  • T:2ヶ月以内

ステップ5:優先順位をつける

課題 インパクト 実行難易度 優先度
着用動画の追加 簡単 1位:すぐ実行
AIサイズ推奨機能 難しい 2位:計画的に準備
💡 このケースのポイント
  • 3つのアプローチを組み合わせて課題を発見
  • MECEで分解して問題箇所を特定
  • ロジックツリーで根本原因を深掘り
  • SMARTで具体的に定義
  • 優先順位をつけて実行可能な計画に

📝 STEP 4 のまとめ

✅ このステップで学んだこと

1. 正しい課題を見つける重要性

  • 「技術力」より「課題設定力」がデータアナリストの価値を決める
  • 「問題」と「課題」を区別する(課題 = ギャップを埋めるために何をすべきか)

2. 課題発見の3つのアプローチ

  • トップダウン型:経営目標から逆算
  • ボトムアップ型:現場の声から発見
  • 外部情報型:市場・競合から発見

3. MECE – 漏れなく、ダブりなく

  • 要素を整理する際の基本原則
  • 切り口:時間軸、プロセス、対象、地域、要素分解など

4. ロジックツリー – 課題を構造化

  • Whatツリー:要素を分解する
  • Whyツリー:原因を深掘りする
  • Howツリー:解決策を洗い出す

5. SMART基準 – 課題を明確に定義

  • Specific(具体的)、Measurable(測定可能)、Achievable(達成可能)、Relevant(関連性)、Time-bound(期限)
💡 最も大切なポイント

データ分析で最も重要なのは、「正しい問いを立てること」です。

どんなに高度な分析手法を使っても、解くべき課題が間違っていれば意味がありません。

今回学んだMECE、ロジックツリー、SMARTは、「正しい問いを立てる」ための強力な武器です。ぜひ実践で活用してください。

🎯 次のステップの予告

次のSTEP 5では、「データ収集の基本」を学びます。どんなデータがビジネスに存在するか、どうやって集めるか、データの質をどう確保するかを習得しましょう!

📝 理解度チェック

学んだ内容を確認しましょう。解答を見る前に、まず自分で考えてみてください。

問題 1 基礎

MECEとは何の略ですか?また、日本語でどういう意味ですか?

【解答】

MECE = Mutually Exclusive, Collectively Exhaustive

日本語では「漏れなく、ダブりなく」という意味です。

  • Mutually Exclusive(相互排他的):要素同士が重ならない(ダブりなし)
  • Collectively Exhaustive(全体網羅的):全体として漏れがない

覚え方のコツ:「ミーシー」と読みます。「見ーしー(全部見て、重複しないようにする)」と覚えると忘れにくいです。

問題 2 基礎

ロジックツリーの3つの種類を答え、それぞれ何を明らかにするためのものか説明してください。

【解答】
  1. Whatツリー(要素分解):「何で構成されているか」を分解する。全体像を把握したい時に使う。
  2. Whyツリー(原因追究):「なぜそうなるのか」原因を探る。問題の根本原因を特定したい時に使う。
  3. Howツリー(解決策検討):「どうやって解決するか」を考える。解決策を網羅的に洗い出したい時に使う。

覚え方のコツ:「What(何?)→ Why(なぜ?)→ How(どうする?)」の順番で覚えましょう。問題解決の流れ(現状把握→原因分析→解決策立案)と対応しています。

問題 3 応用

「売上 = 客数 × 客単価」という公式を使って、「売上が下がった」原因をMECEに分解してください。

【解答例】

第1階層:

  • 客数が減った
  • 客単価が下がった

第2階層(客数をさらに分解):

  • 新規顧客が減った
  • 既存顧客(リピーター)が減った

第2階層(客単価をさらに分解):

  • 購入点数が減った
  • 商品単価が下がった

ポイント:この分解はMECEになっています。売上減少の原因は、必ずこれらのどれか(または複数)に該当します。漏れもダブりもありません。

問題 4 応用

「顧客満足度を上げたい」という課題を、SMARTの5つの基準を満たす形に変換してください。

【解答例】

Before(SMARTでない):

「顧客満足度を上げたい」

After(SMARTに変換):

「6ヶ月以内に、ECサイトのNPSスコアを現在の30から50に向上させる」

  • S(Specific・具体的):ECサイトのNPSスコアを上げる
  • M(Measurable・測定可能):30→50という数値目標
  • A(Achievable・達成可能):業界平均が45なので、50は現実的に達成可能
  • R(Relevant・関連性):満足度向上→リピート率向上→売上増という関連性
  • T(Time-bound・期限):6ヶ月以内

別解:「3ヶ月以内に、カスタマーサポートの満足度調査で『満足』『非常に満足』の割合を現在の60%から80%に向上させる」など、他の指標や期限でもOKです。5つの基準を満たしていれば正解です。

問題 5 発展

あなたが飲食店の店長だとします。「最近、来店客数が減っている」という問題に対して、(1) MECEで原因を分解し、(2) Whyツリーで深掘りし、(3) SMARTな課題定義を作成してください。

【解答例】

(1) MECEで原因を分解

来店客数 = 新規客 + リピート客

  • 新規客が減っている?
    • 通りがかり客が減っている?
    • 口コミ経由が減っている?
    • 広告経由が減っている?
  • リピート客が減っている?
    • 来店頻度が下がっている?
    • 完全に来なくなった?

(2) Whyツリーで深掘り

来店客数が減った
├─ なぜ?→ リピート客が減った
│ ├─ なぜ?→ 来店頻度が下がった
│ │ └─ なぜ?→ 近くに競合店がオープンした ← 根本原因①
│ └─ なぜ?→ 常連客が来なくなった
│   └─ なぜ?→ メニューがマンネリ化している ← 根本原因②
└─ なぜ?→ 新規客が減った
  └─ なぜ?→ 口コミが減った
    └─ なぜ?→ SNSに投稿したくなるような特徴がない ← 根本原因③


(3) SMARTな課題定義

課題1(根本原因②に対応):

「2ヶ月以内に、季節限定メニューを5品追加し、常連客の月間来店回数を平均2回から3回に増やす」

  • S:季節限定メニュー5品追加
  • M:来店回数2回→3回
  • A:メニュー開発は自店で可能
  • R:来店増→売上増
  • T:2ヶ月以内

課題2(根本原因③に対応):

「1ヶ月以内に、SNS映えするフォトスポットと限定デザートを導入し、月間のSNS投稿数(店名タグ付き)を10件から50件に増やす」

❓ よくある質問

Q1: MECEで分解しようとすると、どうしても漏れやダブりが出てしまいます…

完璧を目指さなくて大丈夫です。「だいたいMECE」で十分。

現実のビジネスでは、完全にMECEにするのが難しいことも多いです。以下の対策を試してみてください:

  • 既存のフレームワークを使う:売上=客数×客単価、4P(Product, Price, Place, Promotion)など、確立された切り口を活用
  • 「その他」を使う:どうしても分類できないものは「その他」としてまとめる。ただし、その他が大きくなりすぎないよう注意
  • 他の人にチェックしてもらう:自分では気づかない漏れやダブりを指摘してもらえる

最初から完璧を目指すより、まず作ってみて、後から修正するアプローチがおすすめです。

Q2: ロジックツリーを作るのに時間がかかりすぎます。効率的な作り方はありますか?

最初は時間がかかって当然です。慣れれば速くなります。

効率化のコツ:

  • 時間を区切る:「30分で作る」と決めて、完璧を目指さない
  • 既存のフレームワークを活用:売上分解、顧客購買プロセス(認知→興味→購入)など、定番の切り口を使う
  • テンプレートを用意:よく使うロジックツリーをテンプレート化して再利用
  • ツールを使う:XMind、Miro、PowerPointなど、ツリー図を作りやすいツールを活用

最初は1時間かかっても、慣れれば15分程度で作れるようになります。

Q3: SMARTの「Achievable(達成可能)」の判断が難しいです。どう判断すればいいですか?

過去の実績と、利用可能なリソースを基準に判断しましょう。

判断の目安:

  • 過去の実績:「去年は10%成長した」→「今年は15%成長」は現実的、「今年は100%成長」は非現実的
  • 業界平均:業界トップが達成している数字なら、不可能ではない
  • リソース:予算、人員、時間が十分にあるか確認
  • チームの合意:「頑張れば達成できる」とチームが思えるレベル

迷ったら、少し高めの「ストレッチ目標」を設定するのがおすすめ。簡単すぎるとモチベーションが上がりません。

Q4: 課題発見の3つのアプローチ、どれから始めるべきですか?

状況によりますが、まずはトップダウンがおすすめです。

優先順位の目安:

  1. トップダウン型を最初に:経営目標と紐づく課題は、会社にとって最も重要。まずはここから確認
  2. ボトムアップ型を次に:現場の声から、見落としている課題を発見
  3. 外部情報型を補完的に:競合や市場の動きから、機会と脅威を把握

理想は3つを組み合わせることですが、時間が限られている場合は、トップダウン→ボトムアップの順で進めましょう。

Q5: 「問題」と「課題」の違いがよくわかりません。もう少し詳しく教えてください。

「問題」は状態、「課題」は行動です。

わかりやすく整理すると:

  • 問題(Problem):現状とあるべき姿のギャップ。「困っていること」「解決すべき状態」
    • 例:「売上が目標に届いていない」「顧客満足度が低い」
  • 課題(Issue):問題を解決するために「何をすべきか」。具体的な取り組み
    • 例:「新規顧客を20%増やす」「サポート体制を強化する」

言い換えると:

  • 問題 = What’s wrong?(何が問題なの?)
  • 課題 = What to do?(何をすべきなの?)

問題を特定してから、それを解決するための課題を設定する、という流れです。

Q6: 課題を見つけても、上司に却下されてしまいます。どうすれば採用されますか?

「データ」と「ビジネスインパクト」で説得しましょう。

採用されやすい提案のポイント:

  • データで裏付け:「なんとなく」ではなく、「データがこう言っている」と示す
  • ビジネスインパクトを数値化:「これを解決すると、月間100万円の利益増が見込める」
  • 経営目標との関連を示す:「今期の売上目標達成に直接貢献します」
  • リスクと対策も提示:「失敗した場合のリスクは〇〇だが、△△で対応できる」
  • 小さく始める提案:「まず1ヶ月のパイロットで効果を検証しましょう」

「自分がやりたいこと」ではなく「会社にとって重要なこと」という視点で伝えることが大切です。

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学習メモ

ビジネスデータ分析・意思決定 - Step 4

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