STEP 2:効果的なビジュアライゼーションの原則

📊 STEP 2: 効果的なビジュアライゼーションの原則

良いグラフと悪いグラフの違いを理解し、効果的な可視化の原則を習得しよう

📋 このステップで学ぶこと

  • データインク比最小化(Tufte原則)
  • 認知負荷を軽減する方法
  • 直感的理解を促すデザイン
  • 正確性を担保する技術
  • チャートジャンクの回避
  • 実践的なビフォー・アフター事例

📐 1. データインク比最小化(Tufte原則)

エドワード・タフテとは

エドワード・タフテ(Edward Tufte)は、データ可視化の第一人者として知られるアメリカの統計学者・情報デザイナーです。彼は「情報デザインの父」とも呼ばれ、データをどのように視覚的に表現すべきかについて、数々の原則を提唱しました。

彼が1983年に出版した著書「The Visual Display of Quantitative Information(量的情報の視覚的表示)」は、データ可視化のバイブルとして世界中で読まれています。その中で最も重要な概念が「データインク比」です。

📊 データインク比とは

グラフ全体を構成する要素(インク=ピクセル)のうち、実際にデータを表現している部分の割合のことです。

データインク比の計算式: データインク比 = データを表すインク ÷ グラフ全体のインク 【具体例】 棒グラフの場合: ・データを表すインク = 棒そのもの、軸の目盛り ・データを表さないインク = 背景の模様、3D効果、影、装飾 【理想的な値】 データインク比が高い(80%以上) = 良いグラフ(データが際立つ) データインク比が低い(50%以下) = 悪いグラフ(装飾が多い)
💡 身近な例で考えてみよう

料理で考えると分かりやすいです。

良いグラフ = シンプルな和食(素材の味が生きている)
悪いグラフ = ソースや飾りが多すぎる料理(何を食べているかわからない)

グラフも同じで、データそのものが「主役」であり、装飾は「脇役」であるべきです。脇役が目立ちすぎると、主役(データ)が見えなくなってしまいます。

タフテの5つの原則

タフテは、効果的なデータ可視化のために5つの原則を提唱しました。それぞれを詳しく見ていきましょう。

✅ タフテの5つの原則
原則 意味 実践方法
1. 何よりもデータを見せる 装飾より情報を優先する グラフを作る前に「何を伝えたいか」を明確にする
2. チャートジャンクを避ける 意味のない装飾を削除する 3D効果、影、グラデーションを使わない
3. データインク比を最大化 余計な要素を削る グリッド線を薄く、背景をシンプルに
4. データ密度を上げる 同じ面積により多くの情報を 無駄な余白を減らし、情報を凝縮
5. 多次元性を追求 複数の変数を効果的に表現 色、サイズ、形で複数の情報を同時に表現

チャートジャンクとは

チャートジャンク(Chart Junk)とは、タフテが名付けた言葉で、データの理解に役立たない装飾的な要素のことです。「ジャンク」は「ゴミ」という意味で、グラフにとって邪魔な存在です。

チャートジャンクは見た目を派手にしますが、実際にはデータを読みにくくし、誤解を招く原因にもなります。

❌ チャートジャンクの代表例
チャートジャンク なぜ問題か 代わりにすべきこと
3D効果 遠近感で値が歪んで見える 2D(平面)のグラフを使う
グラデーション 色の境目がわかりにくい 単色で塗りつぶす
影・光沢 データの境界がぼやける 影なしのフラットデザイン
背景画像 データが読みにくくなる 白または薄いグレーの背景
装飾的アイコン 注意が散漫になる データに関係ないイラストは削除
派手なアニメーション データより動きに目が行く 控えめな遷移効果のみ
💡 シンプルさの力

フランスの作家アントワーヌ・ド・サン=テグジュペリ(『星の王子さま』の著者)はこう言いました:

「完璧とは、付け足すものが何もない状態ではなく、削るものが何もない状態である」

データ可視化も同じです。グラフを作ったら、「これを削っても意味が通じるか?」と自問しましょう。削れる要素はすべて削ることで、データそのものが際立ち、見る人に強い印象を与えます。

ビフォー・アフター例:悪いグラフと良いグラフ

具体的な例を見てみましょう。同じデータでも、表現方法でこんなに印象が変わります。

【悪い例】チャートジャンクだらけのグラフ ┌─────────────────────────────────┐ │ ★★★ 売上データ ★★★ │ │ │ │ 110万┤ ╱█╲ ← 3D効果 │ │ 105万┤ █ █ │ │ 100万┤ █ █ ← 影付き │ │ 95万┤ ██ ██ │ │ └───────────── │ │ 1Q 2Q 3Q 4Q │ │ │ │ [背景にビルの写真] ← 邪魔! │ └─────────────────────────────────┘ 【問題点】 ❌ Y軸が0から始まっていない(95万〜)→ 差が誇張される ❌ 3D効果で値が読みにくい ❌ 背景画像がデータを隠している ❌ タイトルが「売上データ」だけで結論がわからない ❌ 装飾的な★マークが無意味
【良い例】シンプルで効果的なグラフ 2024年の売上は第3四半期にピーク達成 (万円) 150┤ │ 100┤ ●──最高値 │ ╱ ╲ 50┤ ●──● ● │ 0└───────────── 1Q 2Q 3Q 4Q 出典: 社内販売データ 2024年 【改善点】 ✅ Y軸を0から開始 → 正確な比較が可能 ✅ シンプルな折れ線 → データが見やすい ✅ 背景は白 → データが際立つ ✅ タイトルで結論を伝達 → 一目でメッセージがわかる ✅ 出典を明記 → 信頼性が向上

🧠 2. 認知負荷の軽減

認知負荷とは何か

認知負荷(Cognitive Load)とは、情報を理解するために脳が使うエネルギーのことです。

人間の脳には処理能力の限界があります。一度に多くの情報を処理しようとすると、脳が疲れて理解が遅くなったり、間違えたりします。これが「認知負荷が高い」状態です。

認知負荷が高いグラフは、見る人を疲れさせ、理解を妨げます。逆に、認知負荷が低いグラフは、見た瞬間に理解でき、見る人にストレスを与えません。

💡 日常生活での認知負荷

認知負荷は日常でも体験しています。

認知負荷が低い例:信号機(赤=止まれ、青=進め)→ 一瞬で理解できる

認知負荷が高い例:初めての複雑な書類を記入する → 時間がかかり、疲れる

🧠 認知負荷を下げる7つの方法

以下の方法で、グラフの認知負荷を下げることができます。

方法 説明 具体的なやり方
1. 色数を制限 色が多いと混乱する メインカラー3〜5色まで。重要でないものはグレー
2. グリッド線を薄く グリッドは補助的な存在 薄いグレーにするか、完全に削除
3. 凡例を近くに 目線の移動を減らす グラフの横や上に配置。または直接ラベル
4. 直接ラベル 凡例より見やすい 棒の上や線の近くに数値を直接表示
5. 余白を確保 詰め込みすぎは疲れる グラフ同士の間隔を開ける。呼吸スペースを作る
6. 一貫性を保つ 同じルールで統一 複数グラフで色・フォント・スタイルを統一
7. 階層を明確に 重要度の違いを視覚化 タイトルは大きく太字、注釈は小さく控えめに

目線の動きを考える

グラフをデザインする際は、人間の目が自然にどう動くかを考慮することが大切です。目の動きに逆らわないレイアウトにすることで、認知負荷が下がります。

👀 人間の目の自然な動き
パターン 説明 グラフへの応用
左から右 横書きの読み方に慣れている 時系列は左(過去)→右(未来)に配置
上から下 重要な情報から読む習慣 タイトルと最重要情報を上に配置
大→小 大きいものに先に目が行く 重要な要素を大きく表示
明→暗 コントラストが高いものに注目 強調したい部分に濃い色を使用

ミラーの法則(マジカルナンバー7)

心理学者ジョージ・ミラーは1956年の論文で、人間が一度に記憶できる項目数について研究しました。その結果、「7±2」(つまり5〜9個)という数字が導き出されました。これを「ミラーの法則」または「マジカルナンバー7」と呼びます。

🔢 ミラーの法則をグラフに応用

人間の記憶の限界を考慮すると、グラフの設計にも制限が必要です。

項目 推奨数 多すぎる場合の対処
カテゴリ数 5〜7個まで 残りは「その他」にまとめる
凡例の項目 5〜7色まで グループ化して色数を減らす
ダッシュボードのグラフ数 1画面に5〜7個 ページを分けるかタブ化
1つのグラフに含める系列 3〜5本まで グラフを分割する

ヒント:情報をチャンキング(グループ化)することで、見かけ上の項目数を減らせます。例えば、12ヶ月のデータを4つの四半期にまとめるなど。

💡 3. 直感的理解を促すデザイン

直感的とは何か

直感的なグラフとは、説明がなくても理解できるグラフのことです。見た瞬間に「あ、これは〇〇を表しているんだな」「この部分が重要なんだな」とわかります。

直感的なグラフを作るには、人間が本能的に持っている「当たり前」の感覚に沿ったデザインにすることが大切です。

直感的理解を促す5つのテクニック

✅ テクニック1: 自然な対応関係を使う

現実世界での感覚とグラフの表現を一致させると、説明なしで理解できます。

現実世界の感覚 グラフでの表現 逆にすると…
上=多い、高い Y軸は上に行くほど値が大きい 混乱する
右=未来、進む 時系列は左から右へ 読みにくい
赤=危険、警告 問題のあるデータを赤で表示 意味が逆転
緑=安全、良い 目標達成を緑で表示 混乱する
大きい=重要 重要なデータを大きく表示 優先度がわからない
✅ テクニック2: タイトルで結論を伝える

グラフのタイトルは「何のグラフか」ではなく「何がわかるか」を伝えましょう。

【タイトルの良い例・悪い例】 ❌ 悪い例(抽象的): 「売上データ」 「月別推移」 「比較グラフ」 → 何を見ればいいかわからない ✅ 良い例(結論を伝える): 「2024年の売上は前年比20%増加」 「第3四半期に過去最高を記録」 「A商品がB商品を上回り1位に」 → タイトルだけでメッセージが伝わる!
✅ テクニック3: 軸の範囲を適切に設定する

軸の範囲設定で、グラフの印象は大きく変わります。設定を間違えると、データを誤解させる原因になります。

【軸の範囲による印象の違い】 例:A店舗の売上 98万円、B店舗の売上 100万円 ❌ Y軸が95〜105万円の場合: 105┤ 100┤ ████ 95┤ ████ └──────── A店舗 B店舗 → Bの方が「2倍」に見える!(実際は2%差) ✅ Y軸が0〜120万円の場合: 120┤ 100┤ ████ ████ 50┤ ████ ████ 0┤ ████ ████ └──────── A店舗 B店舗 → 実際の差がわかる(ほぼ同じ) 【原則】 ・棒グラフ: Y軸は必ず0から始める ・折れ線グラフ: 変化の傾向を見せたい場合は調整OK         ただし、軸を切り取っていることを明記する
✅ テクニック4: データの順序を工夫する

データの並び順で、理解しやすさが大きく変わります。目的に応じて適切な順序を選びましょう。

目的 推奨する順序 具体例
ランキングを見せたい 降順(大→小) 売上上位10店舗
変化を見せたい 時系列順 月別売上推移
カテゴリに意味がある 論理的順序 年齢層(10代→20代→30代…)
特に優先順位がない アルファベット順/五十音順 都道府県別データ
✅ テクニック5: 比較しやすい配置にする

比較したいデータは、できるだけ近くに配置します。目線の移動が少ないほど、比較が容易になります。

比較の種類 効果的な配置 避けるべき配置
カテゴリ間の比較 グループ化棒グラフ(隣同士に配置) 別々のグラフに分離
時系列の比較 同じグラフに複数の線を重ねる 縦に並べた別々のグラフ
今年 vs 去年 今年を濃い色、去年を薄い色で重ねる ページを分ける

✅ 4. 正確性を担保する技術

正確性とは

正確性とは、データを歪めず、誤解を招かずに表現することです。

意図的にデータを操作することは論外ですが、無意識のうちに誤解を招くグラフを作ってしまうこともあります。グラフの作り方次第で、同じデータでもまったく違う印象を与えることができてしまうのです。

データ可視化には倫理的責任があります。見る人を騙さない、正直なグラフを作ることが、データサイエンティストの基本です。

❌ よくある正確性の問題
問題 なぜ誤解を招くか 具体例
Y軸が0から始まらない棒グラフ 差が実際より大きく見える 98%と100%の差が2倍に見える
面積と値の不一致 視覚的な大きさが比率と合わない 円の直径を2倍にすると面積は4倍になる
3D円グラフ 遠近感で手前が大きく見える 実際は同じ割合でも見た目が違う
二重Y軸の誤用 異なるスケールで相関があるように見せられる 無関係な2つのデータに因果関係があるように見える
累積グラフの誤用 常に右肩上がりに見える 実際は減少傾向でも増加しているように見える

正確性を保つ7つのルール

✅ ルール1: 棒グラフのY軸は0から始める

棒グラフは高さ(長さ)で値を表すため、0から始めないと誤解を招きます。

例外:折れ線グラフで変化の傾向を見せたい場合は、軸を調整することが許容されます。ただし、「軸を切り取っている」ことを注釈で明記しましょう。

✅ ルール2: 面積は値に比例させる

バブルチャートや絵グラフで円や図形を使う場合、面積が値に比例するようにします。

注意:円の「直径」を2倍にすると、「面積」は4倍になります。値が2倍のとき直径を2倍にすると、4倍大きく見えてしまいます。

✅ ルール3: 3D効果は使わない

3D効果は見た目を派手にしますが、遠近感によって値が歪んで見えます。特に3D円グラフは、手前のセクションが実際より大きく見えるため、使用を避けましょう。

✅ ルール4: データの出典を明記する

データの信頼性を担保するため、出典、日付、サンプル数を記載します。

【出典の書き方例】 出典: 総務省統計局「家計調査」2024年4月 サンプル数: n=1,000世帯 調査期間: 2024年4月1日〜4月30日 【最低限必要な情報】 ・誰が(どの機関が)調査したか ・いつのデータか ・どれくらいのサンプル数か
✅ ルール5: 軸のラベルと単位を明記する

X軸とY軸には必ずラベルを付け、単位を記載します(円、個、%、人など)。単位がないと、見る人は「これは何を表しているのか」を推測しなければなりません。

✅ ルール6: 欠損値を明示する

データがない期間や項目は、破線注釈で明示します。何もないと、見る人は「0」なのか「データがない」のか判断できません。

✅ ルール7: 不確実性を示す

データには誤差や不確実性があります。信頼区間エラーバーで、その範囲を示すことで、過度な確信を避けられます。

⚖️ データ可視化の倫理

データ可視化には大きな力があります。同じデータでも、見せ方次第で人々の印象を操作できてしまいます。

だからこそ、「嘘をつかないグラフ」を作ることが重要です。

グラフを作ったら、必ず自問しましょう:「このグラフはデータを正確に表現しているか?」「誰かを誤解させる可能性はないか?」「自分が見る側だったら、このグラフを信頼できるか?」

🔧 5. 実践的な改善プロセス

グラフを作った後、どのように改善すればいいでしょうか?以下の5ステップで、どんなグラフも効果的に改善できます。

グラフ改善の5ステップ

📝 ステップ1: 目的を明確にする

まず、グラフの目的を確認します。以下の質問に答えましょう:

  • 誰に見せるのか?(経営層、同僚、一般の人、専門家)
  • 何を伝えたいのか?(トレンド、比較、分布、関係性)
  • どんな行動を促したいのか?(決断してほしい、理解してほしい、探索してほしい)

目的が曖昧だと、改善の方向性も定まりません。

📝 ステップ2: 削れる要素を削る

以下の要素を削除できるか検討します:

  • グリッド線(または薄いグレーにする)
  • 枠線・背景色
  • 凡例(直接ラベルに置き換えられないか)
  • 3D効果・影・グラデーション
  • 不要な軸(重複している場合)
  • 使っていない凡例項目
📝 ステップ3: 階層を明確にする

情報の重要度に応じて、視覚的な強弱をつけます:

要素 重要度 視覚的な扱い
タイトル 最重要 大きく、太字、目立つ位置
データ(棒・線・点) 重要 濃い色、適切なサイズ
軸ラベル 補助 中サイズ、グレーでも可
グリッド線 補助 薄いグレー、または削除
注釈・出典 参考 小さく、控えめに
📝 ステップ4: 色を戦略的に使う

色は最も強力な視覚的ツールです。戦略的に使いましょう:

  • 重要な要素だけに色を使う(強調したい1〜2箇所)
  • それ以外はグレーにする(比較対象、背景情報)
  • 色数は3〜5色まで(多すぎると意味がぼやける)
  • 色覚バリアフリーを考慮(赤と緑を同時に使わない)
📝 ステップ5: 他人に見てもらう

最後に、第三者にグラフを見てもらいます。以下の質問をしましょう:

  • 「このグラフから何がわかりますか?」(説明なしで理解できるか確認)
  • 「何か混乱する点はありますか?」(誤解がないか確認)
  • 「もっと知りたいことはありますか?」(情報が足りているか確認)

自分では気づかない問題点を、他人の目で発見できます。

📊 6. ビフォー・アフター実例

実際のグラフ改善例を見てみましょう。同じデータでも、デザイン次第でこんなに印象が変わります。

実例1: 売上推移グラフの改善

【ビフォー:問題だらけのグラフ】 ┌─────────────────────────────────────┐ │ ★★★ 売上データ ★★★ │ │ │ │ 110万┤ ╱█╲ ← 3D効果 │ │ 105万┤ █ █ │ │ 100万┤ █ █ ← 影付き │ │ 95万┤ ████ ████ │ │ └───────────────── │ │ 1Q 2Q 3Q 4Q │ │ │ │ [背景にビルの写真が入っている] │ └─────────────────────────────────────┘ 【問題点を整理】 ❌ Y軸が95万から開始 → 差が誇張されている ❌ 3D効果 → 値が読みにくい ❌ 背景画像 → データが見えにくい ❌ タイトル「売上データ」→ 結論がわからない ❌ 出典がない → 信頼性が不明
【アフター:改善されたグラフ】 2024年の売上は第3四半期に最高値を記録 (万円) 150┤ │ ●───★ 最高値: 105万円 100┤ ●───● ● │ 50┤ │ 0└────────────────────── 1Q 2Q 3Q 4Q 出典: 社内販売データ(2024年1月〜12月) 【改善ポイント】 ✅ Y軸を0から開始 → 正確な比較が可能 ✅ 2Dのシンプルな折れ線 → データが見やすい ✅ 白い背景 → データが際立つ ✅ 結論がわかるタイトル → メッセージが明確 ✅ 出典を明記 → 信頼性が向上 ✅ 最高値に注釈 → 重要ポイントを強調

実例2: 市場シェア円グラフの改善

【ビフォー:問題だらけの円グラフ】 ╭─────────────────────╮ │ 3D円グラフ │ │ (10色使用) │ │ │ │ [10社すべてを │ │ 個別に表示] │ │ │ │ 凡例が下に小さく │ │ パーセント表示なし │ ╰─────────────────────╯ 【問題点】 ❌ 3Dで遠近感が歪む → 手前が大きく見える ❌ 10色で判別困難 → 何がどれかわからない ❌ 凡例が遠い → 目線の移動が多い ❌ %表示なし → 具体的な値がわからない
【アフター:改善されたグラフ】 市場シェア(2024年) A社 35% ████████████████ B社 25% ████████████ C社 20% ██████████ その他 20% ██████████ ← 7社をまとめた ※「その他」の内訳: D社8%, E社5%, F社3%, G社2%, H社1%, I社0.5%, J社0.5% 【改善ポイント】 ✅ 円グラフ→横棒グラフ → 比較しやすい ✅ 10社→上位3社+その他 → シンプルで見やすい ✅ 直接ラベル → 凡例不要 ✅ %を明記 → 具体的な値がわかる ✅ 内訳を注釈で補足 → 詳細が必要な人にも対応

実例3: ダッシュボードの改善

【ビフォー:情報過多のダッシュボード】 ┌──────┬──────┬──────┬──────┐ │グラフ1│グラフ2│グラフ3│グラフ4│ ├──────┼──────┼──────┼──────┤ │グラフ5│グラフ6│グラフ7│グラフ8│ ├──────┼──────┼──────┼──────┤ │グラフ9│グラフ10│グラフ11│グラフ12│ └──────┴──────┴──────┴──────┘ 【問題点】 ❌ 12個のグラフが画面にぎっしり → 認知負荷が高い ❌ すべて同じサイズ → 重要度がわからない ❌ 色がバラバラ → 一貫性がない ❌ どこを見ればいいかわからない
【アフター:階層化されたダッシュボード】 ┌─────────────────────────────────────┐ │【最重要KPI】 │ │ │ │ 売上: 1,500万円 (▲15%) │ │ ↑ 大きく目立つ配置、緑で強調 │ └─────────────────────────────────────┘ ┌────────────────┬────────────────┐ │【主要指標①】 │【主要指標②】 │ │ 客数: 1,200人 │ 客単価: 12,500円│ │ 前月比 ▲5% │ 前月比 ▲10% │ └────────────────┴────────────────┘ ┌─────────────────────────────────────┐ │【詳細情報】(折りたたみ可能) │ │ ▶ 店舗別売上 │ │ ▶ 商品別売上 │ │ ▶ 時間帯別客数 │ └─────────────────────────────────────┘ 【改善ポイント】 ✅ 12個→3階層に整理 → 情報の重要度が明確 ✅ 最重要KPIを大きく表示 → 一番見てほしい情報が目立つ ✅ 詳細は折りたたみ → 必要な人だけ見られる ✅ 色を統一 → 一貫性があり見やすい

📝 STEP 2 のまとめ

✅ このステップで学んだこと
トピック 重要ポイント
データインク比 データを表す部分の割合を最大化する。装飾より情報を優先
チャートジャンク 3D効果、影、グラデーション、背景画像など不要な装飾を削除
認知負荷 色数制限(3〜5色)、余白確保、階層明確化で軽減
ミラーの法則 一度に見せる項目は7±2個まで。それ以上はグループ化
直感的理解 自然な対応関係、結論を伝えるタイトル、適切な順序
正確性 Y軸は0から、3D回避、出典明記、単位記載
改善プロセス 目的明確化→削る→階層化→色→他人に確認
💡 最重要ポイント

効果的なビジュアライゼーションの本質は「シンプルさ」です。

装飾を削り、データを際立たせることで、誰が見ても一目で理解できるグラフになります。

タフテの言葉を思い出しましょう:「何よりもデータを見せる」。次のステップでは、データの種類に応じた最適なグラフの選び方を学びます!

📝 実践演習

演習 1 基礎

以下のグラフの問題点を3つ以上指摘してください。

「3D棒グラフで、Y軸が50から始まり、10色使用、背景に会社ロゴの透かし入り」

【解答例】

以下の問題点があります:

  1. 3D効果:遠近感で値が歪んで見えます。特に手前の棒が実際より大きく見え、正確な比較ができません。2Dの棒グラフにすべきです。
  2. Y軸が0から始まらない:Y軸が50から始まっているため、実際より差が誇張されて見えます。棒グラフは必ず0から開始すべきです。
  3. 色が多すぎる(10色):ミラーの法則によると、人間が一度に認識できるのは7±2個です。10色は認知負荷が高すぎます。重要なカテゴリだけ色を使い、残りはグレーにするか、カテゴリをグループ化して色数を減らしましょう。
  4. 背景の透かしロゴ:データが読みにくくなるチャートジャンクです。ブランディングは別の場所(タイトル横など)で行い、グラフの背景は白またはシンプルにすべきです。
演習 2 応用

あなたが経営層向けに売上報告をするとします。月別売上のグラフを作る際、認知負荷を下げるために実践すべきテクニックを5つ挙げてください。

【解答例】
  1. タイトルで結論を伝える:「月別売上」ではなく「売上は第3四半期にピーク達成、前年比15%増」のように、見た瞬間にメッセージがわかるタイトルにします。
  2. グリッド線を薄くまたは削除:グリッド線は補助的な存在なので、薄いグレーにするか、完全に削除してデータを際立たせます。
  3. 色数を制限する:12ヶ月すべてに違う色を使うのではなく、特に重要な月(ピーク月、目標未達月など)だけハイライトし、他はグレーにします。
  4. 直接ラベルを使用:最高値や最低値など、重要なポイントには数値を直接グラフ上に表示します。凡例を見に行く手間が省けます。
  5. 余白を確保する:グラフを画面いっぱいに広げず、適度な余白を設けることで、見やすさが向上します。

その他の有効なテクニック:前年同月比を薄い色で重ねて表示、目標ラインを破線で追加、など。

演習 3 発展

「データインク比」の概念を使って、あなたが最近見たグラフ(新聞、ニュース、SNSなど)を評価してください。データインク比が高いか低いか、その理由を説明してください。

【解答のポイント】

以下の観点で評価してください:

データを表す要素(データインク):

  • 棒、線、点など、実際にデータを示している部分
  • 軸の目盛り(値を読むのに必要)
  • データラベル(値を示すテキスト)

非データ要素(ジャンク):

  • 3D効果、影、グラデーション
  • 背景の模様や画像
  • 過度な装飾(アイコン、イラスト)
  • 濃すぎるグリッド線

評価の目安:

  • データインク比 80%以上:優れたグラフ(シンプルで見やすい)
  • データインク比 50-80%:普通のグラフ(改善の余地あり)
  • データインク比 50%以下:改善が必要(装飾が多すぎる)

❓ よくある質問

Q1: シンプルにしすぎて、つまらないグラフになりませんか?
シンプル ≠ つまらないです。データ可視化の目的は「情報を伝えること」であり、「見た目を派手にすること」ではありません。シンプルなグラフは、データそのものが際立つため、むしろ美しく、プロフェッショナルに見えます。Appleの製品デザインを思い出してください。シンプルだからこそ洗練されているのです。装飾に頼らず、データの力で魅せるのが本当のプロです。
Q2: 会社のブランドカラーを使わなければならないのですが、派手な色です。どうすればいいですか?
ブランドカラーは「アクセント」として使いましょう。すべての要素にブランドカラーを使うのではなく、最も重要な部分だけに使います。例えば、タイトルやメインのデータポイントにブランドカラー、その他の部分はグレーにすることで、ブランドを守りつつ読みやすさも確保できます。ブランドガイドラインにグレーや補助色が定義されていれば、それを活用しましょう。
Q3: グリッド線は完全に削除すべきですか?
場合によります。グリッド線は「補助的な存在」であるべきです。完全に削除すると値が読みにくい場合は、薄いグレーで残します。また、横線だけ残して縦線は削除するなど、必要最小限にすることがポイントです。Excelのデフォルトの濃いグリッド線は、ほとんどの場合で薄くするか削除した方が、データが見やすくなります。
Q4: 円グラフは絶対に使ってはいけないのですか?
使っても良い場面はありますが、条件があります。円グラフが適切なのは以下の場合です:①カテゴリが3〜5個以内、②合計が100%になることを示すのが重要、③2D(平面)で作成、④各セクションにパーセントを直接表示。しかし、多くの場合、円グラフより横棒グラフの方が比較しやすく推奨されます。特に、「どれが一番大きいか」を見せたい場合は、棒グラフの方が優れています。
Q5: タイトルに結論を書いたら、プレゼンで話すことがなくなりませんか?
むしろ逆です。タイトルで結論を示すことで、聴衆は「何について話すのか」を最初に理解できます。そして、あなたは「なぜその結論に至ったのか」「背景にはどんなデータがあるか」「どんな対策を取るべきか」といった深い議論に時間を使えます。「このグラフは何を示しているか」を説明する時間が減り、より価値のある議論ができるのです。聴衆も、結論を先に知っている方が、説明を理解しやすくなります。
📝

学習メモ

データ可視化マスター - Step 2

📋 過去のメモ一覧
#artnasekai #学習メモ
LINE