STEP 9:母平均の検定

📐 STEP 9: 母平均の検定

z検定とt検定を使いこなそう

📖 このステップで学ぶこと

STEP 8で学んだ仮説検定の理論を、母平均の検定に応用します。

📝 練習問題: 20問
🎯 到達目標: 母平均のz検定ができる(σ既知)、母平均のt検定ができる(σ未知)、片側検定と両側検定を使い分けられる、検定結果を正しく解釈できる

1️⃣ 母平均の検定(z検定:母分散既知)

z検定とは

z検定(z-test)
母分散σ²が既知のとき、母平均μについて検定する方法

検定統計量:
Z = (X – μ₀) / (σ/√n)

帰無仮説H₀が正しいとき、Z ~ N(0, 1)

z検定の手順

検定の手順(5ステップ)

仮説設定
 H₀: μ = μ₀
 H₁: μ ≠ μ₀(または μ > μ₀ または μ < μ₀)

有意水準
 α = 0.05(通常)

検定統計量
 Z = (X – μ₀) / (σ/√n)

棄却域
 両側: |Z| > 1.96
 右片側: Z > 1.645
 左片側: Z < -1.645

判定
 Zが棄却域に入れば H₀を棄却
例題1: ある製品の重さの標準偏差はσ=5gと分かっている。
規格値は100gである。
サンプル25個の平均が102gだった。
規格値と異なるといえるか?(α=0.05、両側検定)
解答: 規格値と異なるといえる(有意差あり)



【ステップ1: 与えられた情報を整理】
・サンプルサイズ: n = 25
・標本平均: X̄ = 102g
・母標準偏差: σ = 5g(既知)
・帰無仮説の値: μ₀ = 100g(規格値)
・有意水準: α = 0.05
・検定の種類: 両側検定(「異なる」)



【ステップ2: 仮説を設定】

H₀: μ = 100(規格値と同じ)
H₁: μ ≠ 100(規格値と異なる)

「異なる」なので両側検定



【ステップ3: 使う検定を確認】

σ = 5g が既知 → z検定を使う

検定統計量: Z = (X – μ₀) / (σ/√n)



【ステップ4: 検定統計量を計算】

標準誤差を計算:
SE = σ/√n = 5/√25 = 5/5 = 1

検定統計量Zを計算:
Z = (X – μ₀) / SE
= (102 – 100) / 1
= 2 / 1
= 2.0



【ステップ5: 棄却域を確認】

α = 0.05 の両側検定:
棄却域: |Z| > 1.96

         ←── 95% ──→
    ┌────────────────────┐
2.5%│     採択域         │2.5%
────┴────────────────────┴────
  -1.96       0       1.96
 ← 棄却域              棄却域 →



【ステップ6: 判定】

|Z| = |2.0| = 2.0

2.0 > 1.96 なので棄却域に入る



【ステップ7: 結論】

H₀を棄却する

「有意水準5%で、製品の重さは規格値100gと
異なるといえる」



【計算のまとめ】
Z = (X̄ - μ₀) / (σ/√n)
  = (102 - 100) / (5/√25)
  = 2 / 1
  = 2.0

|Z| = 2.0 > 1.96(棄却域)
→ H₀を棄却 → 有意差あり



【結果の意味】
「もし本当に規格値通り(μ=100)なら、
 平均102gという結果が出る確率は
 とても小さい(5%未満)」

→ 規格値とは異なる可能性が高い
→ 製品の調整が必要かもしれない
💡 z検定のポイント
σ既知: 母分散が分かっている
標準正規分布: Z ~ N(0,1)
大標本: nが大きければ近似的に使える
実務では稀: σが既知なことは少ない

2️⃣ 母平均の検定(t検定:母分散未知)

t検定とは

t検定(t-test)
母分散σ²が未知のとき、母平均μについて検定する方法

検定統計量:
T = (X – μ₀) / (s/√n)

帰無仮説H₀が正しいとき、T ~ t(n-1)

t検定の手順

検定の手順(5ステップ)

仮説設定
 H₀: μ = μ₀
 H₁: μ ≠ μ₀(または μ > μ₀ または μ < μ₀)

有意水準
 α = 0.05

検定統計量
 T = (X – μ₀) / (s/√n)

棄却域
 自由度 ν = n – 1 のt分布から決定
 両側: |T| > t(ν, 0.025)
 右片側: T > t(ν, 0.05)
 左片側: T < -t(ν, 0.05)

判定
 Tが棄却域に入れば H₀を棄却
例題2: 新しい学習法の効果を調べたい。
従来法の平均点は65点。
新学習法で16人を訓練したら、平均68点、標準偏差6点だった。
効果があるといえるか?(α=0.05、右片側検定)
t(15, 0.05) = 1.753
解答: 効果があるといえる(有意)



【ステップ1: 与えられた情報を整理】
・サンプルサイズ: n = 16
・標本平均: X̄ = 68点
・標本標準偏差: s = 6点
・帰無仮説の値: μ₀ = 65点(従来法)
・有意水準: α = 0.05
・検定の種類: 右片側検定(「効果がある」= 大きい)
・t値: t(15, 0.05) = 1.753



【ステップ2: 仮説を設定】

H₀: μ = 65(効果なし、従来法と同じ)
H₁: μ > 65(効果あり、従来法より良い)

「効果がある」= 点数が上がる = 右片側検定



【ステップ3: 使う検定を確認】

σは未知(sを使う)→ t検定を使う

検定統計量: T = (X – μ₀) / (s/√n)
自由度: ν = n – 1 = 16 – 1 = 15



【ステップ4: 検定統計量を計算】

標準誤差を計算:
SE = s/√n = 6/√16 = 6/4 = 1.5

検定統計量Tを計算:
T = (X – μ₀) / SE
= (68 – 65) / 1.5
= 3 / 1.5
= 2.0



【ステップ5: 棄却域を確認】

α = 0.05 の右片側検定、自由度15:
棄却域: T > t(15, 0.05) = 1.753

         ←── 95% ──→
    ┌─────────────────────┐
    │     採択域          │5%
────┴─────────────────────┴────
            0          1.753
                       棄却域 →

T = 2.0 はここ → 棄却域に入る!



【ステップ6: 判定】

T = 2.0

2.0 > 1.753 なので棄却域に入る



【ステップ7: 結論】

H₀を棄却する

「有意水準5%で、新学習法には効果があるといえる」



【計算のまとめ】
T = (X̄ - μ₀) / (s/√n)
  = (68 - 65) / (6/√16)
  = 3 / 1.5
  = 2.0

T = 2.0 > 1.753(棄却域)
→ H₀を棄却 → 効果あり



【z検定との違い】
z検定: σが既知 → σを使う → Z ~ N(0,1)
t検定: σが未知 → sを使う → T ~ t(n-1)

今回はσが未知なのでt検定を使用
💡 t検定のポイント
σ未知: 標本標準偏差sを使う
t分布: 自由度 n-1
実務で一般的: 通常はこちらを使う
大標本: nが大きいとz検定に近づく

3️⃣ 片側検定と両側検定の使い分け

両側検定

両側検定(two-tailed test)

使う場面:
「異なる」「変化した」かを調べたい
方向は問わない

H₁: μ ≠ μ₀

棄却域:
両側に分散(α/2ずつ)

片側検定

片側検定(one-tailed test)

使う場面:
「大きい」「小さい」など方向が決まっている

右片側: H₁: μ > μ₀
「増加した」「向上した」「効果がある」

左片側: H₁: μ < μ₀
「減少した」「低下した」「削減された」

棄却域:
片側だけ(α全部)
⚡ 片側と両側の使い分け

両側検定を使う:
• 「規格と違うか」
• 「差があるか」
• 方向が分からない・問わない

片側検定を使う:
• 「改善したか」
• 「効果があるか」
• 方向が明確

注意:
データを見てから片側・両側を決めるのはNG!
事前に決める必要がある
【棄却域の比較(α=0.05)】

【両側検定】
棄却域: |Z| > 1.96
→ 両側に2.5%ずつ

【右片側検定】
棄却域: Z > 1.645
→ 右側に5%全部

【左片側検定】
棄却域: Z < -1.645
→ 左側に5%全部

※片側の方が棄却域が広い
→ 同じデータでも棄却しやすい
        

4️⃣ 検定結果を正しく解釈する

結論の書き方

帰無仮説を棄却したとき

✅ 良い表現:
• 「有意水準5%で有意差がある」
• 「効果があると認められる」
• 「μ₀とは異なるといえる」

❌ 悪い表現:
• 「帰無仮説は間違っている」(断定しすぎ)
• 「対立仮説が正しい」(証明ではない)
帰無仮説を棄却できなかったとき

✅ 良い表現:
• 「有意差は認められない」
• 「効果があるとはいえない」
• 「差があるとは言えない」

❌ 悪い表現:
• 「帰無仮説が正しい」(証明していない)
• 「差がない」(差がないことを証明していない)
• 「効果がない」(効果がないと証明していない)
⚠️ 重要な注意点

統計的有意 ≠ 実質的に重要

• サンプルサイズが大きいと、小さな差でも有意になる
• 有意でも、実用上は意味がない場合もある
• 効果の大きさ(effect size)も考慮すべき

有意でない ≠ 差がない

• サンプルサイズが小さいと、差があっても有意にならない
• 「差がないと証明」ではなく「差があると言えない」

📝 練習問題(20問)

このステップの理解度を確認しましょう。16問以上正解できれば次のステップへ進めます。

問題 1

z検定の条件

z検定を使うための条件は?

解答: 母分散σ²が既知

【解き方】
または nが十分大きい場合も近似的に使える
問題 2

t検定の条件

t検定を使うのはどんなとき?

解答: 母分散σ²が未知のとき

【解き方】
標本標準偏差sを使う
実務ではほとんどこちらを使用
問題 3

検定統計量(z)

z検定の検定統計量の公式は?

解答: Z = (X - μ₀) / (σ/√n)

【解き方】
標準正規分布N(0,1)に従う
分母はσ(母標準偏差)を使う
問題 4

検定統計量(t)

t検定の検定統計量の公式は?

解答: T = (X - μ₀) / (s/√n)

【解き方】
自由度n-1のt分布に従う
分母はs(標本標準偏差)を使う
問題 5

両側検定の棄却域

α=0.05の両側z検定で、棄却域は?

解答: |Z| > 1.96

【解き方】
Z < -1.96 または Z > 1.96
両側に2.5%ずつ振り分け
問題 6

片側検定の棄却域

α=0.05の右片側z検定で、棄却域は?

解答: Z > 1.645

【解き方】
片側なのでz(0.05)を使う
右側に5%全部
問題 7

z検定の計算

n=64, X=52, σ=8, μ₀=50 のとき、検定統計量Zは?

解答: Z = 2

【解き方】
SE = σ/√n = 8/√64 = 8/8 = 1
Z = (52-50)/1 = 2/1 = 2
問題 8

判定(z検定)

問題7で、α=0.05の両側検定のとき、H₀を棄却するか?

解答: 棄却する

【解き方】
|Z| = 2 > 1.96 なので棄却域に入る
→ H₀を棄却
問題 9

t検定の計算

n=25, X=55, s=10, μ₀=50 のとき、検定統計量Tは?

解答: T = 2.5

【解き方】
SE = s/√n = 10/√25 = 10/5 = 2
T = (55-50)/2 = 5/2 = 2.5
問題 10

自由度

n=20のt検定で、自由度は?

解答: 19

【解き方】
自由度 = n - 1 = 20 - 1 = 19
問題 11

両側と片側の選択

「新薬の効果がある」を調べるとき、両側・片側どちら?

解答: 右片側検定

【解き方】
H₁: μ > μ₀(効果の方向が決まっている)
「効果がある」= 「良くなる」方向
問題 12

仮説の設定

「平均値が100と異なるか」を調べる。帰無仮説は?

解答: H₀: μ = 100

【解き方】
対立仮説: H₁: μ ≠ 100(両側検定)
帰無仮説は「=」の形
問題 13

結論の書き方

H₀を棄却したとき、正しい結論は?

解答: 有意水準5%で有意差がある

【解き方】
「H₀は間違い」は不適切
断定しすぎない表現を使う
問題 14

結論の書き方2

H₀を棄却できなかったとき、正しい結論は?

解答: 有意差は認められない

【解き方】
「差がない」「H₀が正しい」は不適切
差がないことを証明したわけではない
問題 15

実務での選択

実務で母平均を検定するとき、通常はz検定・t検定どちら?

解答: t検定

【解き方】
母分散が既知なことは稀
通常はt検定を使用
問題 16

大標本

nが十分大きいとき、t検定は何に近づくか?

解答: z検定

【解き方】
t分布が標準正規分布に近づく
n≥30程度で近似
問題 17

統計的有意性

「統計的に有意」であることと「実質的に重要」は同じか?

解答: 異なる

【解き方】
nが大きいと小さな差でも有意になる
効果の大きさ(effect size)も考慮すべき
問題 18

片側検定の注意

データを見てから片側・両側を決めてよいか?

解答: よくない

【解き方】
事前に決める必要がある
後出しは第一種の誤りを増加させる
問題 19

総合問題1

n=36, X=103, σ=12, μ₀=100, α=0.05(両側)。z検定の結果は?

解答: H₀を棄却しない

【解き方】
SE = σ/√n = 12/√36 = 12/6 = 2
Z = (103-100)/2 = 3/2 = 1.5
|Z| = 1.5 < 1.96 なので棄却域に入らない
→ H₀を棄却しない
問題 20

総合問題2

n=16, X=72, s=8, μ₀=70, t(15,0.05)=1.753, α=0.05(右片側)。判定は?

解答: H₀を棄却しない

【解き方】
SE = s/√n = 8/√16 = 8/4 = 2
T = (72-70)/2 = 2/2 = 1
T = 1 < 1.753 なので棄却域に入らない
→ H₀を棄却しない(効果があるとはいえない)

⚠️ よくあるつまずきポイントと対策

z検定とt検定を間違える

対策: σ(母標準偏差)が与えられているか確認しましょう。

  • σが既知 → z検定(Z = (X̄-μ₀)/(σ/√n))
  • σが未知 → t検定(T = (X̄-μ₀)/(s/√n))
  • 問題文に「母標準偏差」「σ」があればz検定

棄却域の向きを間違える

対策: 対立仮説H₁の不等号で判断しましょう。

  • H₁: μ ≠ μ₀ → 両側(|Z| > 1.96)
  • H₁: μ > μ₀ → 右側(Z > 1.645)
  • H₁: μ < μ₀ → 左側(Z < -1.645)

棄却と棄却しないを逆にする

対策: 「棄却域に入る → 棄却」と覚えましょう。

  • 検定統計量が棄却域に入る → H₀を棄却
  • 検定統計量が棄却域に入らない → H₀を棄却しない
  • 「棄却」= 「差がある」という結論

結論の書き方を間違える

対策: 「〜といえる」「〜とはいえない」を使いましょう。

  • 棄却 → 「有意差がある」「効果があるといえる」
  • 棄却しない → 「有意差は認められない」「効果があるとはいえない」
  • 「差がない」「H₀が正しい」は使わない

📚 このステップのまとめ

🎯 学習したこと

  • z検定: σ既知、Z=(X-μ₀)/(σ/√n)
  • t検定: σ未知、T=(X-μ₀)/(s/√n)
  • 両側検定: μ ≠ μ₀(|Z| > 1.96)
  • 片側検定: μ > μ₀ または μ < μ₀
  • 結論の書き方: 有意/有意でない
  • 注意点: 統計的有意 ≠ 実質的重要
💡 次のステップへ進む前に
練習問題で16問以上(80%以上)正解できたら、STEP 10に進みましょう!

検定統計量の計算と判定の手順をしっかり身につけましょう。
結論の正しい書き方も重要です!
📝

学習メモ

統計検定2級対策 - Step 9

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